海沼志那子歌集『雪を踏む』

踏む雪はヒールの足を滑らせてひとりを想ふ心ゆるがす

風と雪身をさいなみて旅心はかなくなりぬ大石田の町

苗木より育てし白樺この夏はうす紫の蝶まとはせる

まなこ閉じ思ひ出せぬをくやしがる母よ母よ波打ち寄せる

 

亡き母への追慕、先立っていた同胞への敬虔な祈り。

旅の歌、人間の歌、草花の歌、すべてが作者の生のあかしだ。

老いは歌の世界に滋味と深みとをおのずから孕ませる!

 

46版上製カバー装 2100円•税込