鎌田芳郎歌集『喜界島』

焼酎ににぎはふ夜はいつしかも三線が鳴り島唄が出る

見はるかす藍青の海いらだちて島の春野は風鳴るばかり

この子らに父はをるなり父をらぬ家に育ちしこの子らの父

一天に雲なき夏の日の下に貧しき畑に芋を堀りにき

特攻兵散りたる海の夕空に星を招きて阿檀の葉ゆらぐ

振りかへる人もなからん道ばたの大根の花あはきむらさき

 

鎌田さんにとって喜界島とは文字通り「喜びの世界」なのである。

読者は『喜界島』を詠みながら、自分自身のふるさとについても思いを寄せられるであろう。 伊藤一彦•序より

 

四六判上製カバー装 2625円•税込