倉石理恵歌集『銀の魚』

夏の夜をふたりでおりぬ呼吸の間のしじまを銀の魚とびはねる

沢水は冷たかりしか白黒の母の笑顔とキャラバンシューズ

ちちのみの父ははそばの母若く基地の桜の下に逢いしを

雷神も見惚れいるらん鐙摺(あぶずり)の夏至の夕暮れ雨後のむらさき

夫は夫のわたしはわたしのデジカメで並び写せり渓底の水

 

この歌集の中心となるのは家族の歌である。生きてゆくこととそのことにまつわる根源的な孤独が、家族という存在のぬくもりを、より切実なものにしているのである。 谷岡亜紀・跋より

 

四六版上製カバー装丁 2500円・税別