阿武隈の土手に黄の花咲く頃かほのかに辛き春の菜摘まん
スイスにて出産するとの娘の覚悟いかに支えん母なるわれは
記念の木なれども伐ると諦めることから始まる哀しみのあり
ぽつぽつと漢詩や短歌もちりばめて泣き言いわぬこころが光る
今もまだ長屋門の前に立ち母が待つような小春日の空
北国の風土に根ざしつつ、そこに生きるすべてのものを慈しむこころ。どんな辛さの中にあっても周りのものを思いやる上林さんの歌には、やわらかな明るさがある。泣き言を言わなかった母の姿そのままに。
久我 田鶴子
A5版上製カバー装 2800円・税別