京の雅でも陸奥の素朴でも無い坂東の鄙びた歌を詠む心定まる
グループホームの往診で義歯を預かり直してまた届ける朝と昼の間に
生老病死の四文字に振り回される人生もとどのつまりは骨壺ひとつ
送り盆を済ませてホッとする夕べ 八月十五日は人生の原点
一番幸せだったのは戦争のなかった幼年時代と老々介護の今
何よりもこの一巻には作者の雄々しい人生哲学という心棒が貫かれています。どの一首にもユーモアと俳諧味に支えられた未来志向の生活術とクールな自己批判のまなざしがいきいきと光り輝いています。
黒田杏子・序より
A5版上製カバー装 2700円・税別