どっこいしょと立ち上がる私よいしょと腰かける夫老いづく二人
晴れの日も雨の日も風の日も、いつも傍にいて共に歌を作り、病む日はその全てを支え合う。安らかならざる老いを肯い、〈どっこいしょ〉〈よいしょ〉と声を揃える、この究極の愛の姿は、『流れる雲』に溢れる愛と祈りそのものである。
佐藤孝子・序より
かなしきほどに小さき衣の干されけり一つの命生れしこの家
姑のしがらみより抜けねばと紅うすく引きて朝の庭を清むる
古稀過ぎて着けたる義肢は重くして幼のごとき歩みになりぬ
桃の花ふくらみくれば恋しさのつのる故郷はここよりも北
風花とうやさしき名を持つ老人の憩える苑にわれも安らう
A5版上製カバー装 2600円・税別