佐竹キヌ子歌集『盆地霧』

定価:2500円(税別)

判型:四六判上製カバー装

頁数:188頁

ISBN 978-4-86629-145-1

ぽつねんと置き去りにされし芋の子が秋の畑にため息を吐く

 

秋の畑に置き去りにされた<芋の子>は、すなわち作者の自画像であり、根雪の塊なのであろう。この根雪を融かし、著者を閉ざされた雪国から陽光の満ちる日向に連れ出したのは、転居した相模原での暮らしとお孫さんの存在であろう。  佐藤孝子『盆地霧』に寄せてーより

 

三人の孫の二人と駆け抜けしドラえもんに会ふ春の映画館

 

私にも甘えし親がゐたやうな前の世はただ吹雪きて見えず

 

花輪線の大館駅はつひの駅すでに行きずりの旅のさびしさ

 

誕生日に欲しいものはと子に問はれ 自由があるから歌があるから

 

公園に曲がる路肩の小さなるくぼみに昨夜の雨水ひかる