由田欣一歌集『酔生無死』

定価:2500円(税別)

判型:四六判上製カバー装

頁数:220頁

ISBN978-4-86629-160-4

 

                     お     い   ど

御居処とふ古びし言葉思ひ出す

ふつくらどしり鏡餅坐す

 

御居処とは尻のことで、女性が用いた用語という。

「おんいどころ」とも言うらしい。

老境に達した方の経験から生まれたユーモアであろうか。

 

晋樹隆彦 跋より

 

 

 

春愁のあつまり易きゐさらひの鞣してをりぬ春のふらここ

 

啓蟄の土の中より這ひ出でて出たとこ勝負の百万の虫

 

家持の国府に生れしひばりの子 弥生の空はお前のものだ

 

草まるめ鍬を洗へば遠くより馬の匂ひのたすがれが来る

 

流れくる桃を百年待つやうに酔生無死と生きてゆきたし