江畑實著『創世神話「塚本邦雄」初期歌集の精神風景』

定価:1,980円(税込)

判型:四六判並製カバー装

頁数:300頁

ISBN978-4-86629-334-9

炎のように青くー

塚本邦雄、前衛歌人の軌跡

冷徹にしてときに青く炎だつ、灼熱の詩的パンセ!

 

 

若き日の葛藤、苦悩、そして情熱…

塚本邦雄の初期歌集誕生の時代背景と内的ドラマを克明に辿り、その作品価値を現在に再創造する。

冷徹な分析と情熱的な論考が織り成す、470枚の圧倒的な詩的思索。文学とは何か、そして前衛とは?

 

<目次より>

「前衛以前」に胚胎するもの

『水葬物語』の生成

死の歌の互換可能性

死という栄光

『往復書簡』-批評の戦場

『透明文法』のメトード

『装飾樂句』-倒立した硝子のオブジェ

『日本人靈歌』-革命か、ニヒリズムか

『水銀傳説』-孤立無援の「前衛派」

『水銀傳説』-「言語フェティシズム」の詩法

『緑色研究』-藝術至上萬華鏡

『感幻樂』-「闘争」の季節に

『星餐圖』-韻律の彼岸へ

 


鷺沼あかね歌集『天朗』

定価:2,750円(税込)

判型:四六判上製カバー装

頁数:196頁

ISBN978-4-86629-328-8

 

第二歌集!

 

たとえば空の青の深処へ

そっと言葉を置く。いつか、どこかで

置き去られたはずの言葉が輝きを放ち始める。

平凡な日常であっても、病む日々であっても。

すべてを歌のしらべに委ねて、命の気息を確かめたい。

 

 

 

<引用5首>

冬木の枝いつぱいに咲く雪の花あしたの空へ散りかへるべし

 

しかられて暗くなるまで歌ひたりひとり鞠つき「あんたがたどこさ」

 

オリオンの三つ星さしてありんこの行列きたと麻里ちやん笑ふ

 

反物は茜の光 ひろげれば花輪の山を染める夕焼け

 

天の河かかり星団あまたある肺の宙なるCT画像

 

 

 

 


園部みつ江歌集『命をぢかに』

定価:2,750円(税込)

判型:四六判上製カバー装

頁数:180頁

ISBN978-4-86629-329-5

第四歌集

 

 

信頼篤い二人が見つめ合う互いの眼差しに

「命をぢかに」と気づいた含羞が眩しい。

 

愛の歌集の

深く尊い味わいと出会えた。

 

御供平佶 帯文

 

 

 

 

<引用5首>

 

光背を炎(ほむら)に凝らす目にやがて七羽の火の鳥の影

 

紅葉の樹々のあはひに奥まれる多宝塔夕べの闇に呑まれぬ

 

ゆかしさの日々に募り来アヴェ・マリア終の別れをわが告げざりき

 

円柱の中ほど太く地震に耐へ大和飛鳥の寺社に伝へ来

 

あたたかき胸にうつぶすわが裡を溢れくるもの零るるままに

 


安斎未紀歌集『掌上動物園』

定価:2,530円(税込)

判型:四六判並製カバー装

頁数:172頁

ISBN978-4-86629-325-7

自ら体験した心身の苦しい状況を短歌で表現するということは、その苦悶を追体験することにほかならない。

それは生半可な精神ではできない。

これを表現せずにいられないという強靭な表現意志が必要なのだ。

その表現意志に短歌型式もまた、応えている。

その意味で安斎未紀は、まぎれもなく短歌に選ばれた人である。

短歌に選ばれた人の命がけの表現を受けとめてほしい。

 

            ー藤原龍一郎「解説」よりー

 

 

 

<引用五首>

 

とめどなく花手折りたり眼底に狂ひ回れる観覧車かな

 

病棟がま水に沈む午前零時 我が鼻犬のごとくつめたし

 

呪ふこと傷抉ることわらふこと 雨一滴の紅かれと思ふ

 

掌に象よ、麒麟よ、獅子よ歩め、ものみな小さく見ゆる星月夜

 

眠れぬを日常として暗がりに水色の蛾の舞ひ狂ふなり

 

 

 

 


佐藤博之歌集『殘照の港』

 

定価:1,870円(税込)

判型:四六判並製カバー装

頁数:130頁

ISBN978-4-86629-312-7

 

第一歌集!

 

観ずにはいられない、

聴かずにはいられない、

触れずにはいられない。

 

どこまでも対象に肉薄していく言葉たち。

著者の世界に対する解像度の高さによって、世界が現実以上の迫力を持って目の前に立ち上がってくる。

過ぎゆく一瞬、今という時を生き、歌うとはこういうことなのだ。

<帯文 佐佐木定綱>

 

 

 

◉引用五首

 

殘照の靜けさ。木ずれ、波の音。三笠が闇を吸ひて膨らむ

 

千年經る藥師如來の掌の生命線の斯くも短し

 

父に教はりしセミウヰンザーノツトにて謝辭を述べつるぬばたまの通夜

 

百億の稻の寢汗のにほひ立つ眞夏の横て盆地の夜明け

 

ベランダに干したるシヤツの影が伸び妻の背中をひらりくすぐる

 

 


鈴木英子歌集『喉元を』

定価:2,640円(税込)

判型:四六判上製カバー装

頁数:176頁

ISBN978-4-86629-3141

待望の第五歌集!

 

月島、勝どき橋、佃、晴海。

そこは東京の異界、作者の産土の地。

現実をそのままに受容し、あらんかぎりの思いをこめて、娘に、母に、すべての日常の中ですれ違ってきた人々に。

あかあかと血の夕映えを吐き続ける。心が震える。歌が顫える。

 

 

『喉元を』より五首

 

桜さくら戦後をふぶき一本の樹命、寿命を迎えるらしき

 

セルロイドみたいな声だ 本当に愛しているのは他人ではない

 

身の内に積もる憂いをわたくしも春に噴くかな春を噴くかな

 

われの手がはるか武将の太首を刎(は)ねたることのなきとは言えず

 

わたしのなかの鍾乳洞が喉元を過ぎたしずくを湛え続ける

 

 


松森邦昭歌集『しゃれこうべの歌』

定価:2,350円(税込)

判型:四六判上製カバー装

頁数:146頁

ISBN978-4-86629-297-7

脳神経外科医師の第三歌集。

 

しゃれこうべ―――。

どこか異様で、

もの悲しく、

どこか陽気で、

笑っているように

見える。

定型という器も

言葉を剥がして

しまえば同じこと。

さて、歌の行く先は

この世か、あの世か、

それとも?

 

 

『しゃれこうべの歌』より五首

 

どくろの眼 深い奥には穴のあり花も見ていた星もみていた

 

地球史の四六億年今日も暮れ昨日みた月またのぼりきし

 

わが棺をつつむ火群の静かなり焼けゆく身柄を我が見つめる

 

我が意思のおよばぬ言葉「さような」一人つぶやくむなしきままに

 

春立つ日望月やわく野に照りて木の芽花の芽こころ急かせる

 

 


桜田一夫歌集『星の祈り』

定価:2,200円(税込)

判型:四六判並製カバー装

頁数:144頁

ISBN978-4-86629-304-2

 

渇きたる心を満たすスイーツを探し求めて旅をつづけむ

 

短歌を作ることは物事を正確に多角的に見る目が養われます。

題材も様々なことを選ぶことができます。

短歌は心と体のバランスを取ってくれます。

短歌によってこれまでとは違う経験をさせてもらいました。

「あとがき」より

 

 

『星の祈り』より五首

 

車椅子駆りてボールを打ち返しテニスコートに風を起こせり

 

記憶にはなきことなれど真夏の日玉音放送必ず聞きし

 

街道に並びて立てる杉の木も行く人もみな風景である

 

夕暮れの家の灯かげの点々と線をなしつつ町にひろがる

 

黒々と間隔取りて電線につばめの群れいる旅立ちの朝

 

 

 


玉井まり衣歌集『しろのせいぶつ』

定価:2,200円(税込)

判型:四六判並製カバー装

頁数:120頁

ISBN978-4-86629-298-4

 

「静物」と言ふ名のうつはをじつとみるほんとうにさうかうたがつてゐる

 

 

この歌集の歌達は、妙にたどたどしく、妙に歪んていて、そのくに妙にシンプルで澄んでいる。

それは、対象であれ、それに投影される自分であれ、謎は謎として受け入れようとする著者の誠実さによる。-----森本平「解説」より

 

 

 

『しろのせいぶつ』より五首

 

プラスチックの光がキレイと君は言ふ 背骨は少し傾けてゐる

 

しづかなるガラスの向かふに置かれてる歪な壺にさはれない指

 

眼の前を二本の素足が歩いてく ひざの裏から春の産む少女

 

手や足やその他の私を撮つてゐるアルバムに撮影者はいない

 

凍る夜にマスクのあなた話してる喉は抉れた顔の続きだ

 

 


水門房子歌集『ホロヘハトニイ』

定価:2,750円(税込)

判型:四六判並製カバー装

頁数:232頁

ISBN978-4-86629-293-9

このあいだ君の子供を見かけたよ

     机の上のクモ

      横に飛ぶ

 

藤田武は「もっと自由に大胆に飛べ」と諭したという。師の言葉に、忠実であろうとする弟子水門房子。

かくも美しく古風な師弟関係が、旧来の「短歌とはこういうものだ」という固定観念を打ち破る歌集『ホロヘハトニイ』となった---------石川幸雄「解説」より

 

                      

 

 

藍色の空に浮かんだグラデーション

     宵の明星

     三日月の月

 

おひさまが昇る頃には日常の生活のなか

       あなたも

       わたしも

 

かあさまがワッフル焼いて

    誕生会

ストローで飲むリボンシトロン

 

あの人が四回異動するうちに

  わたしは何をしてたか

      五年

 

 

 

 

 

 


白井美沙子歌集『クロッカスの庭』

第二歌集。

 

いつせいに黄のクロッカス花開きははなき実家(さと)の庭に春来る

 

黄色いクロッカスの花が咲き始めている。

誰もいないこの家の庭に春が来た。

その静かな華やぎの中に歌のしらべが自然と寄り添う。

いのちのほんとうの形を思い起こせとばかりに、やさいく。

 

いのちに向き合うやさしさに満ちた第二歌集

 

 

 

 

本箱のうしろのすき間に落ちし額もう永久に会へぬ気がする

 

きさらぎのバケツに張りし薄氷をすくひて母のてのひらにのす

 

雲の上(へ)にくつきり映るふらここの影がゆるるよ誰もをらぬに

 

母逝きて空家となりし実家(さと)なれど郵便受けに夕日来てゐる

 

ひば伐れば椿の木にも陽のとどきうす桃色の花の咲きつぐ

 

 

 

 

 


岡田延子歌集『七曜星』

定価:2,640円(税込)

判型:四六判上製カバー装

頁数:164頁

ISBN978-4-86629-287-8

 

第一歌集

 

小題をつけられた作品の集まりごとに、明確な題材、テーマが打ち出されている。

連作を単位としたテーマ性という考え方を強く打ち出したのが、昭和三十年代に始まるいわゆる「現代短歌運動」だが、この歌集もその意味で、まぎれもなく「現代短歌」の一巻である。

谷岡亜紀「解説」より

 

『七曜星』は、北斗七星の別名です。

北極星を探す指針となり、目的の地を目指す旅人を、無明より導く星です。輝く七つの星に安寧なる未来を、と願いを込めて歌集を『七曜星』と決めました。

著者 「あとがき」 より

 

『七曜星』より5首

 

歯科医院の壁にビュッフェの版画あり海空暗く人影の無く

 

巨大なる風車回りて海岸の四度目の夏ゆっくりと過ぐ

 

この世には悲しみの歌数多(あまた)有りて大地の民は泣きながら歌う

 

おぼろげな記憶の中を歩み行く托鉢の僧大寒の辻

 

生き生きて行き着く先に花野あり夢の終わりの百合の群生

 


山脇志津歌集『笹舟』

判型:四六判上製カバー装

定価:2,750円

頁数:230頁

ISBN978-4-86629-281-6

ひろらかなひかりの歌、第一歌集!

-------------------------------------------------------------------------------

明るさと広がり、開放感と向日性、未来、前進、「ひかり」の内包するものは、そのまま山脇さんの歌の質や、方向を意味しているように思われる。ひかりを詠み、不義を許さぬ作者が、心に育んできたものを大切に守り続けることを、願ってやまない。

 

------------------------五十嵐順子 跋より-------------------------

 

『笹舟』より5首

 

透明な秋のひかりが降りそそぐ凪静もれる大土佐の海

 

栴檀の珠実ゆらして風がゆく無音のそらにひかるすじ雲

 

ゆるしてくださいお願いします五歳のこえは天に届かず

 

しっかりと吾が手を握る幼子の膚の温もりいのちの不思議

 

庭石に座れば太古の温みあり私はわたしと思う秋の日

 


桜田一夫歌集『インターナショナル』

定価:2,200円(税込)

判型:四六判並製カバー装

頁数:148頁

ISBN978-4-86629-282-3

 

第二歌集!

 

 

高々と握りこぶしを突き上げてインターナショナル歌いし日あり

 

定年退職後にあることを切っ掛けに短歌を始めましたが、歌人でもあった母の影響が多分にあったと思います。

短歌の題材は様々な分野に及び、私にとって精神のバランスを取るのに有用であったように感じます。

-----------「あとがき」より

 

 

 

『インターナショナル』より5首

 

羽化したる蝶のごとくに玄関に並べ置かれる娘の革靴

 

企業名背負いて一人さりげなく土俵の砂を掃き清めおり

 

引力に逆らうごとく伸びてゆく春の目覚めの樅の枝たち

 

点線が実線となれば傘をさし広重の絵の人物となる

 

二十年住みしマンション引き払う最後の風を窓より入れて

 

 

 

 


城俊行歌集『白の伝説』

定価:2,750円

判型:四六判上製カバー装

頁数:222頁

ISBN978-4-86629-278-6

 

第三歌集!

 

清冽な水のような無垢なるたましいは、

時として痛ましい現実に向き合ったとき、

めらめらと悔しみの焔を噴き上げる。

焔はやがて透明になり青空へ消えていく。

そんな表情が歌の年輪に刻まれる。

真っ白な年輪に。

 

 

 

『白の伝説』より5首

 

雪深く残る吉野山のぼりゆく藎十方ほろびに向かふ朝に

 

ひまはりの種てのひらに暖めて野火のごとく悲しみのくる

 

手にこぼれ来たる伝言のやうに持たされし葱を抱けば

 

風のままに下りきたりぬうつしみのかぎりなく軽くなりゆくいのち

 

一瞬のこころさわぎか豆腐切る無心のひまにきざしくるもの

 

 

 

 


佐藤恵美子歌集『青葉木莵』

定価:2,750円

判型:四六判上製カバー装

頁数:228頁

ISBN978-4-86629-266-3

第三歌集!

 

『青雁』『島梟の森』などの歌集の著者、佐藤恵美子は新アララギの探鳥の歌人として知られる。

 

人生半ば、病を得た彼女は、度々の生命の危機を乗り越えて来た。そのさなか、杖とも頼む夫君を失い悲嘆のどん底にあった。

 

しかし、やがてそこから立ち上がった。

 

彼女を暖かく見守る子や孫たち、庭を訪れる多くの野鳥たちを詠むことを力に再起したのだ。本書は一日一生の思いを伝える一歌人の「生」の記録である。(雁部貞夫)

 

 

『青葉木菟』より5首

 

古(いにしへ)の名残とどむる石畳踏みしめ登るコロンブス生家へ

 

歩幅広く歩む大鷺のたつる波鳰の浮巣を岸に寄せ来る

 

山歩きすでに叶はぬわが身なれ『日本百名山を詠む』を手に心豊けし

 

自然に親しむ心伝へしは祖父にして野鳥愛するわれとなりたり

 

慈悲心鳥の声聞き佇む里山の朝の冷気に活力の湧く

 

機の窓にまもりしかの山デナリ峰われはマッキンリーと呼びて親しむ

 

病みてより探鳥会に行くを得ず庭に尉翁あしたより来る

 


佐藤公子歌集『草かもしれず花かも知れず』

定価:2,640円(税込)

判型:四六判並製カバー装

頁数:164頁

ISBN978-4-86629-26-1

第一歌集!

 

はじまりは糸のやうなる葱の芽の

あをあをと立つ新春の庭

 

「蝶」や「蟻」、且つは「もぐら」のような小動物までもが登場し、そこからまた、自分の家の庭の風景や、野に咲く花々へ目のゆく、その目線の柔らかさが実に魅力的なのである。

---浜田康敬 「跋文」より

 

 

 

 

『草かもしれず花かも知れず』より五首

 

電話機の着信記録非通知を示せば想像膨らませをり

 

青色の紙に直線引くやうな電線伸びをり夏空の中

 

三ミリのありが五ミリの虫を曳きじぐざぐ歩きて視界

 

息継ぎのごとく地面を盛り上げてわが家の庭に棲むもぐらもち

 

見慣れたる川も田んぼも旅人の心で見れば美しきわが町

 

 

 

 

 


坂井修一著『世界を読み、歌を詠む』

判型:46判並製カバー装

頁数:276頁

定価:2,750円(税込)

ISBN978-4-86629-238-0

 

古今東西の古典から現代文学、思想を読み解く文学者の貌。

情報科学の先端分野を探求し続ける科学者の貌。

 

伝統とは何か。

変革とは何か。

人間とは何か。

その時、歌は・・・。

 

横溢する知性と感性が、縦横無尽にこの世界を跳梁跋扈する。

 

 

 

 

荘子よ、馬場あき子よ。アイザック・アシモフよ。無為なるすぐれたものたちはとうに滅び果て、この地球の上は経済ロボットのような人間が跋扈している。ああ、せめてもは、黄金の言葉をもって私の貧しい胸の中に入り、甘酸っぱく渋く苦く、感覚と観念の渾沌を醸しつつ、宇宙の遊びをやりつくしてくれ。(本文より)

 

 


永田吉文歌集『実朝の風』

定価:2500円(税抜)

判型:四六判上製カバー装

頁数:220頁

ISBN978-4-86629-237-3

 

第三歌集!

 

鎌倉の駅前客を待つバスに

    さつと乗り来る実朝の風

 

旅人は風に歌う。

恋は花に紛れようとする。

太陽は月光を全身にあびながら。

何の衒いがあろうか。素の心のままに歌う。

 

 

 

身近なる小田急・横浜両線の町田駅わがうき世の要

 

夢二絵の和服姿の女性立つそこより入るは風韻の道

 

一本の傘を杖とし佇める歌の聖は何を詠はむ

 

まみどりの森にかこまれ緑なす水面をゆらす鳥々の声

 

陽の光気持ち良き日はわが身にも発散しゆく何ものかある

 

 

 

 


北川美江子歌集『スパイス・ノート』

定価:2,400円(税別)

判型:A5判並製カバー装

頁数:162頁

ISBN978-4-86629-235-9

第一歌集!

 

そもそもスパイスのプロだった。独自のレシピでお客さんを唸らせつづけたが、その陰には相棒というべき奥さんの絶大な協力があった。(中略)

詩人のセンス、文章力にも恵まれているから、何でも書いて残す気になるにちがいないだろう。人生を語るなんて気はないらしくて、世の中のひとつひおつの瞬間や事のなりゆき、目の前のもろもろが、おもしろくてならないのだと思う。奥さんが短歌と出会ってくれたことを心から喜びたい。

『スパイス・ノート』は、そんな奥さん、北川美江子さんのおもしろさが冴え冴えとみなぎっている一冊目の歌集である。(今野寿美ー跋文より)

 

 

 

黒き津波のことは知らずに東京の余震のおなかを眠るみどりご

 

こくこくと飲んでいた水昼寝するおさなごを洩れわたしを濡らす

 

三十五年のちの校舎に若き日のわれのしっぽを踏んづけている

 

さんざんだ、さんざんだよと雨が降りあたり一面金木犀散る

 

愛しさが食べたさになるてのひらで子豚まるごと油ぬるとき

 

 

 

 

 

 


鈴木恵子歌集『久遠の学舎』

定価:2,750円(税込)

判型:四六判上製カバー装

頁数:176頁

ISBN978-4-86629-221-2

第一歌集!

 

この生徒(こ)らと過ごしし日日(ひび)も人生(ひとよ)にて

裁断せずに記憶とせむか

 

評論集『平成データ短歌論』を著者にもつ歌人が、教師時代の三十年を振り返って詠んだ第一歌集である。実は、私もある時期まで教師を目指していたのだが、こんな<先生>になりたかったな、と心底思う。  ー帯文 黒岩剛仁ー

 

 

 

 

迸る噴水のごと湧きあがるこころとあひぬ教師となる日

 

少年よまつすぐに立てまがりしはわが支へ棒のみじかきゆゑか

 

「先生も大変だよね」なにげなき言葉にたぢろぎ委員長をみる

 

満開の枝垂桜のかがようてたむくさまなるわが離任式

 

駆けあがるまだ駆けあがる始業ベル鳴りやまぬうちに教室へ 夢

 

 

 


佐佐木幸綱歌集『春のテオドール』

定価:2,500円

判型:四六判上製カバー装

頁数:234頁

ISBN 978-4-86629-207-6

おもいつきたることあるらしく

二階からいそぎおりくる

テオとであえり

 

さりげなく。しかし、噛みしめて、じっくりと味わうものだ。

上澄み液の底に沈殿するこの暮らしの時間を。

 

 

 

雪よこい はじめての雪はじめてのテオがむかえる正月のため

 

少女ふたりならんでたてばおてだまのようにまあるい白い雪ふる

 

のぶつなの生家のにわに井戸ありていまもむかしの空をうつせり

 

糸川のみずにネオンのみどりいろくだけて人はさけをのむべし

 

わたりゆく鳥のこころよ こころあれどテオはじぶんの旅にはでない

 

 

 


淺田隆博歌集『四季の輝き』

判型:四六判上製カバー装

頁数:210頁

定価:2,500円(税別)

ISBN978-4-86629-210-6

 

第四歌集!

 

見わたせばとりどりの花咲ききそふ我しらずして歌口ずさむ

 

身めぐりの樹木や花々、鳥や虫たちをじっと観る。聴き耳をたてる。

森羅万象、呼吸している。歌を口ずさむように、呼びかけるように。

四季の移ろいこそが歌の時間、流やまぬ生を受け止める浄福だ。

 

 

 

 

春 かいつぶり三羽のひながかたまりてゆらゆらうかぶ春の日のあくび

 

夏 あめ色のうつせみぐつと樹皮つかむ生をきざみしあかしのごとく

 

秋 金色の銀杏並木をゆく人のほほのほのかに黄に染まりたる

 

冬 雪囲ひのぼたんの側に水仙の小さき花の凛と咲きゐる

 

 

 

 

 


椎野久枝歌集『街川の四季』

定価:2,300円(税別)

判型:四六判上製カバー装

頁数:144頁

ISBN978-4-86629-208-3

街川の四季いち早く滔々と水の流れて夏の日反す

 

 

著者の住む地域を流れる街川は、信長が弟の信勝と戦った古戦場の名残の名塚取手、庚申塚が川辺にある。その街川の四季折々の情景に癒され励まされ、大切な心のオアシスとなっている。更に短歌のモチーフになり第二歌集になった。帯文(青木陽子)

 

 

 

 

淀みなく流るる川の音乱し鳶忙しく舞ふ影長し

 

年頭に夫の書きたる予定表死の翳りなど微塵のあらず

 

前向きの残生是とし声にして誓へば闇の開ける思ひ

 

若き等の声新鮮に受け容れて共にピザ食む異の空間に

 

易々と語れぬ事情幾つ経て劇団はやも二十年迎ふ

 

 


島ゆり歌集『ハーブキャンディ』

判型:四六判上製カバー装

頁数:154頁

定価:2,400円

ISBN978-4-86629-202-1

第一歌集!

 

ここちよい相聞のひびきをもって、

こころの襞がくっきりと透けて見えるひととき。

これが愛だ、恋だ、そして言葉たちの自由な饗宴だ。

さあ、わたしの歌世界で存分に憩い、輝いてください!

 

 

 

あかつきの夢の朝顔ぱっくりと我を飲みこみほほえみにけり

 

楡の木のしげみの下にすわっていると恋しいあなたを殺したくなる

 

空に浮かんだ三日月の先が凍てついてコキンと壊れてしまいそうな夜

 

生焼きの肉にレモンをしぼる君わたしもそんな風に愛して

 

物事の始めはすべて子宮からわが身を見つめフラメンコ踊る

 

 


加藤ミユキ歌集『歳月の庭』

定価:3,000円(税別)

判型:A5判上製カバー装

頁数:204頁

ISBN978-4-88629-197-0

その庭にはおごそかで豊かな時間が流れていた。

梔子、山茶花、季節の花々に人生がかかわっていく不思議。

夫、子供、孫、すべてがいとおしい存在として華やぐ幸せ。

齡九十を過ぎて、なお歌は滋味を深めつつ熟成を続けている。

 

 

中年のグループと席異なれど等しく岡井隆の弟子

 

夕空の下に手をつなぎ交々に泣きしよセーラー服の友とわれとは

 

荷物なきカートは軽し下り坂ゆくときに波にのるごと動く

 

蹲踞の水にくる鳥一羽いつしか友となりて待つわれ

 

美しく夜が明けたりととのへて枕辺に置きし衣に手を通す

 

 


清水あかね歌集『白線のカモメ』

定価:2,500円

判型:四六判上製カバー装

頁数:210頁

ISBN978-4-86629-196-3

 

 

 

猿人がくいっくいっと背を伸ばし進化してゆく古代史年表

桜咲く夕べも傘なき雨の夜も小さな橋をわたしは渡る

高く高くエスカレーター天に伸び真冬静かな科学未来館

 

世界を、人生を、歴史を、時代を、柔軟に素直に受け入れつつ、ゆったりと歌うスケールの大きな歌が見どころ。女子高生を教える教員として、夭折した弟を思う姉として、自由に旅をする日本人として、過去を未来をこころに浮かべる表現者として、前向きな感性を自在に解放して見せた歌集である。(帯文:佐佐木幸綱)

 

 

 

この星に私はどこからきたのだろうコンタクト入れ今日が始まる

 

もういない弟おもえば飴色の玉蜀黍茶のほのかな甘み

 

樹もわれも見えない光に照らされて八月のかげ舗道にきざむ

 

逢いたくて逢いたくなかったひとと逢う火星が地球に近づいた夏

 

ちらちらと常葉の揺れて生垣を過る人影 向こうはどの世

 

 

 


中平武子歌集『しらべは空に』

版型:四六判上製カバー装

頁数:234頁

定価:2,500円(税別)

ISBN 978-4-86629-180-2

 

第二歌集!

 

中平さんの浪漫的な想像力は、

橅の木に向かえば橅の内なる音とつながり、

日に輝く菜の花の中ではひとひらの菜の花となるというように、

身体変幻のしらべを強く響かせる。

ーーーーーーーーーーーーーーー日高堯子跋より

 

 

ぶなの木のうちなる音を聞かんとし橅は吾とひとつになりぬ

 

菜の花のひとひら一片日を受けて輝く朝はわれも菜の花

 

皆おなじ答を言ふと詰る声 死にたき人は深夜の電話に

 

人との距離保つに雀に似てゐるや ためらひがちに友の手をとる

 

ここに座しともに桜を仰ぎたる時もどしをり夕暮の園

 

 


高旨清美歌集『雀のミサ曲』

版型:四六判上製カバー装

頁数:188頁

定価:2,500円(税別)

ISBN978-4-86629-187-1

 

現代女性歌人叢書24

 

毅然として物憂い表情。

たとえば都市の路地を彷徨う

ゆきずりの猫。

暗くて寂しい眼差しの奥に何があるのだろうか。

 

歌は祈りのかたちを孕みながら、

ゆっくりと静かに天井へと膨らんでいく。

 

 

銀色のキャップを冠せていつぽんの色鉛筆を使ひきりたり

 

帰る家あるのかと問ふゆきずりの猫の左右の瞳濁れば

 

空を見ることのふえをり空を見て旅のこころの湧くにあらねど

 

早世の家系に生れて秋の日を浴めり窓辺に身のゆるぶまで

 

春の芽吹き秋の落葉 忘れられてゆくはもつともさびしかること

 


笹本碧歌集『ここはたしかに 完全版』

判型:四六判上製カバー装

頁数:212頁

定価:2,500円(税別)

ISBN978-4-86629-171-0

 

進化論は地球でいちばん大きな樹

その枝先にきょうも目覚める

 

人間の生命の向こうには地球があり、その向こうには宇宙が広がっている。

否、向こうにあるのではない。地球上の生命体の細胞から天体の運行まで、それらは互いに関連しつつ不断の運動をつづけているのである。広く深いパースペクティヴに立って自身の生命をい見つめる斬新な歌集

佐佐木幸綱 帯文

 

細胞の一つ一つに約束が組み込まれている 耳をすませる

 

この秋の裏側に春はあるというあらゆる命は天秤の上

 

ほぐれくる樫の枝先いのちとは直線でなくでこぼこなんだ

 

 

『ここはたしかに 臨時版』から1年、『ここはたしかに 完全版』が刊行となりました。

 

栞付き(俵万智、藤原邦義、笹本信夫・笹本惠、佐佐木頼綱)

 

 


園田昭夫歌集『少しだけ苦い』

判型:四六判上製カバー装

頁数:188頁

定型:2,500円(税別)

ISBN978-486629-162-8

 

十七歳の神無月こそわすれまじわが生き方を決めし浅沼さん

 

比例選挙名簿にわれの名載りて人の妬みの深さ知りぬ

 

ふたつみつ疫病かかえ古稀となる明日は明日同行二人

 

悪性の腫瘍と告げる意志の顔励ます声は翳りをもちて

 

先生ほど九条を愛した人はいない九条歌人岩田正罷る

 

 

 

歌集『少しだけ苦い』には、苦労を重ねた父母、伯母の被爆による隠れるような暮らしなど、戦後の暮しの位相、若く経験した魑魅魍魎の政治の世界、そして知った啄木の短歌。一度は「政治」と手を切り、それらを振り切るために出た遍路。これらはこの歌集の根幹にかかわっている。短歌への出発時からの歌のモチーフ、社会との関連性、幻滅して政治を離れてなお社会矛盾の多さに再度運動へ戻ってゆく日々を通し太らせた軌跡が色濃く歌われる。それは戦後を生きた園田昭夫の内面を語っている。                    ー田村広志 帯文ー

 

 

 


佐佐木幸綱歌集『テオが来た日』

定価:2500円(税別)

判型:四六判上製カバー装

頁数:200頁

ISBN 978-4-86629-169-7

 

タイトルは、わが家にいる雄犬・テオに由来する。家の中で飼っていて、寝室も一緒なので、まあ家族の一員のような感じである。息子たち二人が独立して行ったので、この家にはいま人間が二人しかいない。言ってみれば、三人家族のような暮らしをしている。                                              --あとがきより

 

 

 

ウイスキーに氷を入れて振る音におやっと見上げ再びねむる

 

全力で走りきてターンするときに腰がよろめく幼きゆえに

 

今年生まれのテオが今年の百合に逢う安保法制に人さわぐ日を

 

大ぶりの百合咲きたれば花の揺れにじゃれながら雄蘂の黄に染まるなり

 

白い頭の毛が黄に染まり黄の頭ふりながらわが膝に乗り来る

 

 


島崎榮一歌集『小雅』

版型:A5版上製箱入り

頁数:176頁

定価:2,500円(税別)

ISBN978-4-86629-164-2

 

 

円熟の第14歌集!

A5版の箱入り、タイトルが空押し加工で、とても品のあるデザインです。

 

すべてはおのずから……そうつぶやく。

身めぐりの草や花や木々を、そして鳥たちを愛でる。

はや八十代に入ったこの老いの人生に、

さまざまな生の陰影や色彩を持ち来るものたちよ。

わたしの命とは朽ちた木の葉の一枚、寒がりの尺取虫だ。

 

 

風の日のかれあしむらの中心に石ありいしは馬頭観音

 

黒ぐろと内臓透きて蝌蚪およぐ朝の水田に手を清めたり

 

戦争の日の寂しさをつれてくる夕日の赤をけふは憎みぬ

 

葉おもてにのりて暫くゆれゐしがわが感情は夕べ波打つ

 

柿落葉つもれる上に風が来て家族だんらんのごときその声

 

 

 


由田欣一歌集『酔生無死』

定価:2500円(税別)

判型:四六判上製カバー装

頁数:220頁

ISBN978-4-86629-160-4

 

                     お     い   ど

御居処とふ古びし言葉思ひ出す

ふつくらどしり鏡餅坐す

 

御居処とは尻のことで、女性が用いた用語という。

「おんいどころ」とも言うらしい。

老境に達した方の経験から生まれたユーモアであろうか。

 

晋樹隆彦 跋より

 

 

 

春愁のあつまり易きゐさらひの鞣してをりぬ春のふらここ

 

啓蟄の土の中より這ひ出でて出たとこ勝負の百万の虫

 

家持の国府に生れしひばりの子 弥生の空はお前のものだ

 

草まるめ鍬を洗へば遠くより馬の匂ひのたすがれが来る

 

流れくる桃を百年待つやうに酔生無死と生きてゆきたし

 

 

 

 

 

 


島晃子歌集『天上の森』

判型:A5判上製カバー装

頁数:216頁

定価:2600円(税別)

ISBN978-4-86629-146-8

 

第二歌集!

 

社会事情や歴史的背景を踏まえつつ、そこに住む人に寄り添って

自らの肌で感じたことを自分の言葉で表現して詠う。

これからも濃やかな感受性を大切に思索しつつ行動し、

歌をふかめてゆかれるに違いない。

ー長澤ちづ「跋」より

 

 

鍾乳石のような柱が立ち並ぶ天才ガウディの天上の森

 

波荒き三月の海母の眼を背に受けつつ故郷を出づ

 

故郷の春の祭を伝へゐる画面の奥に広がる少女朝

 

みどりごの絶えずうごかすこの柔き手に握らすな銃といふもの

 

往来の音が潮騒に変はるところ此処より吾の海が始まる

 

 


大友清子歌集『すゑひろがり』

判型:四六判上製カバー装

頁数:164頁

定価:2500円(税別)

ISBN 978-4-86629-147-5

異界の夜の眠りにつく。

若葉の揺らぎ、あるいは天地のおだやかな揺りかご。

だが、火の国の風景を人を震撼激変させた隈元自身。

毀れた、こころが砕けた。絶望、悲哀、無念、諦念。さあ、もうここから先は万象吉事、楽しいことばかり。つたない一生を、歌の力を藉りて予祝の志へ。

 

 

 

はじまりの神話のごとしこの村にテレビ来る前ありし青空

 

    おに

鬼は隠と佳き声のして亡き人の空にかけたる神の梯子は

 

 

唐突に醒めし大地掌の上の万物揺すり毀たむとする

 

 

阿蘇の上にすゑひろがりの鰯雲これよりはあれよ楽しきことの

 

                            そら

地震後の夜はたづきなく暗黒の宙の道行く地球を感ず

 

 


佐竹キヌ子歌集『盆地霧』

定価:2500円(税別)

判型:四六判上製カバー装

頁数:188頁

ISBN 978-4-86629-145-1

ぽつねんと置き去りにされし芋の子が秋の畑にため息を吐く

 

秋の畑に置き去りにされた<芋の子>は、すなわち作者の自画像であり、根雪の塊なのであろう。この根雪を融かし、著者を閉ざされた雪国から陽光の満ちる日向に連れ出したのは、転居した相模原での暮らしとお孫さんの存在であろう。  佐藤孝子『盆地霧』に寄せてーより

 

三人の孫の二人と駆け抜けしドラえもんに会ふ春の映画館

 

私にも甘えし親がゐたやうな前の世はただ吹雪きて見えず

 

花輪線の大館駅はつひの駅すでに行きずりの旅のさびしさ

 

誕生日に欲しいものはと子に問はれ 自由があるから歌があるから

 

公園に曲がる路肩の小さなるくぼみに昨夜の雨水ひかる

 


原佳子歌集『空ふたたび』

定価 2400円(税別)

頁数 168頁

判型 四六判上製カバー装

ISBN 978-4-86629-149-9

 

閉ざさずに言葉にのせるそれだけでわたしの空は晴れてゆくなり

 

心を閉ざすことなく言葉にしてしまうという意味でしょう。「わたしの空」というのも比喩的に使われています。あっさりと言っていますが、歌われていることはなかなか深いと思います。     帯文 岡井隆

 

 

ビル街のゼブラゾーンを渡るとき見上ぐる空は碧き十字架

 

五回に一つ止まる呼吸を呼び戻さむ子の枕辺に名を呼びつづく

 

「細胞のひとつひとつが聞いてるよ目を閉じてても声でなくても」

 

吾子が渡りきること叶わざりし道きょうもわたしは歩むほかなし

 

大き空にビードロほっぺん響かせる生まれておいでもういちど君

 


笹本碧歌集『ここはたしかに』

定価:1800円(税別)

版型:四六判並製カバー装

頁数:114頁

ISBN 978-4-86629-151-2

 

進化論は地球でいちばん大きな樹その枝先に今日も目覚める

 

人間の生命の向こうには地球があり、その向こうには宇宙が広がっている。否、向こうにあるのではない。地球上の生命体の細胞から天体の運行まで、それらは互いに関連しつつ不断の運動をつづけているのである。広く深いパースフェクティヴに立って自身の生命を見つめる斬新な歌集。     

 

細胞の一つ一つに約束が組み込まれている 耳をすませる

 

この秋の裏側に春あるというあらゆる命は天秤の上

 

ほぐれくる樫の枝先いのちとは直線でなくでこぼこなのだ

 

                     佐佐木幸綱

 


佐佐木幸綱論集『心の花の歌人たち』

判型:四六判並製カバー装

頁数:276頁

定価:2300円(税別)

ISBN 978-4-86629-136-9

 

竹柏会「心の花」

創刊百二十周年記念事業

佐佐木幸綱序文・跋文・解説

 

八〇年代から四十年近く、多くの歌集の解説を書いてきた。

「心の花」という結社の仲間がすぐれた歌集を多く世に問い、その現場に私がいあわせたことの幸せを改めて感じる。(あとがき より)

 

広く深く おのがじしに 詠う!

 

石川一成・竹山広・築地正子・保坂耕人・晋樹隆彦・俵万智・宇都宮とよ・谷岡亜紀・大野道夫・大口玲子・横山未来子・田中拓也・鶴見和子・黒岩剛仁・小川真理子・矢部雅之・奥田亡羊・坂口弘・藤島秀憲・駒田晶子・齋藤佐知子・山口明子・片山廣子・橘糸重・佐佐木信綱

 


諏訪兼位歌集『若き日のヘーゲル』

 

大地に触れ、大地とともに、

とめどもなく体の中から短歌が生まれてきた。

アフリカの雄麗な景観、人々の熱いまなざしに触れ、

地質学者はこの地球をどうとらえたか、どう感じたか。

 

 

 

『若き日のヘーゲル』より5首

              せんじょうち  さんきょそん

杉むらにとりかこまれし家々よ扇状地美し散居村美し

 

若き日のヘーゲルの日記いと楽し大好物はサクランボなりし

 

地球の夕焼けなべて赤く映ゆ火星の夕焼け青く映ゆるらし

 

アフリカの鳥を語りて尽くるなし真紅の太陽サバンナに落つ

                          な

生まるるは苦しみの世に現るることダキアの民は黒服で哭く

 

 

 

判型:四六判上製カバー装

頁数:178頁

定価:2500円(税別)

ISBN 978-4-86629-122-2

 

 

 


大朝暁子歌集『辰砂の月』

 

円熟の第三歌集!

 

欠けゆきて極まる月の辰砂いろ冬天点す熾火のごとし

 

 

きびしい北の風土。

人間とけだものとの共棲する場所。

歌を詠みきって去る。

命を生ききって去る。

老いともにすべての生と死の意味を

思念しながら、ひそかに。

 

『辰砂の月』より5首

からふと   しすか

樺太の敷香のまちの「専賣局」地図に見つわが生れし所

 

三角の頭を持つ山があらはるる木々枯れ初むる街空のはて

 

狐でも出よと曲がれば狐をりいたく痩せをり尾を垂らしをり

 

母亡くて聞けばしみじみ意味深し「母なる大地」「母なる大河」

 

零下二十度寒さの底とふ日にあふぐ橙ぬくき十六夜の月

 

 

判型:46判上製カバー装

頁数:152頁

定価:2400円(税別)

ISBN 978-4-86629-116-1

 

 

 


峰尾碧歌集『森林画廊』

定価:2500円(税別)

版型:四六判上製カバー装

頁数:216頁

ISBN978-4-86629-000-0

神ありて緑野の秘密印したり雲母鷹の羽蜘蛛の巣の上

 

時満ちて杏に小さき月生りぬ長き日暮を千々に熟れゆく

 

峰尾碧さんの歌は奔放で幻想的だ。しかし表記はごつごつした印象が強い。画数の多い漢字が愛用され、引用歌に見るように名詞が多いせいもあるだろう。字面からみる全体の印象はまことに固い。そのような固定的・集約的な外見と流動的・拡散的な内容との絶妙なバランスに、この作者のなみなみならぬ歌の才能を見る。 佐佐木幸綱

 

 

『森林画廊』より3首

                                    ほとほ

蠧毒もて野とつながれり月の夜の鱗粉の疹闇に熟る

 

              あ                  くち

f字の孔月の形に開きし頃契りし言葉その唇を衝く

 

                         みそとせ ふ    に

砂遊び見つつありしが束の間に三十年経りて肖た子の遊ぶ


反田たか子歌集『子規の地球儀』

      判型:四六判上製カバー装

      頁数:146頁

      定価:2400円(税別)

      ISBN978-4-86629-112-3

 

 

本集で最も多く詠われているのは、戦争をテーマにした作品である。作者は戦後生まれだが、戦中のことを何も話さなかった父や、軍服店を営んでいただ祖父母、戦死した叔父などを通して、あの時代を照らしだしている。

 

               河野小百合「跋」より

 

『子規の地球儀』より5首

 

あかときの演習林を駆け巡り絵馬に戻れり野生の馬は

 

迎え酒みたいな語感ストロンチウム90という黙読すれば

 

なめらかとはいえないのだが手ずからの塑像のまなこは青年のもの

 

軍服を試着せし人あまた知る等身大の鏡一台

 

彫りふかき歩兵の文字をさらさらとすべりゆくなり葉桜の影

 


続きを読む

鈴木陽美歌集『スピーチ・バルーン』

故郷の風土や家族、親族をテーマとした歌が、作品世界に厚みをもたらしている。ユーモアの背後にある、人生の手触りと生きてゆくことへの思いを読み取るべきだろう。

 

               ―――――――谷岡亜紀「解説」より

 

 

『スピーチ・バルーン』より5首

 

鳥の切手花の切手を組み合わせ小さな個展の案内がくる

 

たんぽぽの綿毛残らず風に飛び<負ける勇気>をおもう日曜

 

くさまくら旅の鞄は重すぎるいつか手ぶらで死にゆくものを

                    ベル

がろんがろん腰に鳴る鐘はずすとき父から山の匂い立ちたり

 

明け方の夢のおわりはあるようなないような虹の脚に似ていて

 

 

判型:四六判上製カバー装 

頁数:186頁

定価:2500円(税別)

ISBN 978-4-86629-111-6

 

 

 

 

 

押山千恵子歌集『シタール、響る』

                             

シタールを聴きしはいつか藍深き空のいずこか響る

ると思いつ

 

どこからか、たしかに聴こえる、その音色。

はるか北インドの撥弦楽器の、胸に沁み入る澄んだ調べ。

その調べのように、白い記憶のように、やわらかく。

北海道の大地に暮らしが根づき、歌が根つくまでの歳月。

 

 

 

 

 

『シタール、響る』より5首

 

ぼろぼろになりしと現し身を嘆きたる父のことばが淡雪となる

 

窓を打つ雷雨にめざめ読みつげる韻律論は雫して来ぬ

 

永久凍土に眠りいし幼きマンモスのCT画像の四肢小さきこと

 

列島はさびしき弧にて寒気団せせまればいよよ夢に屈まる

 

蝦夷梟くるりと首を旋らせて春の隠れ処探さんとする

 

判型:四六判上製カバー装 

頁数:174頁

定価:2500円(税別)

ISBN 978-4-86629-110-9

 

 

 

河村郁子歌集『彩雲』(昭和9年生れ歌人叢書8)

 

 

この歌集は作者の飽くことのない好奇心が作らせた一冊と言えるかもしれない。子供の時に昭和の戦争を体験し、少女がから娘になって行くころに戦後の学ぶ自由を身につけ、高度成長期に経営者となり成功を収め、平成の世の平和を楽しまれたひとりの女性の人生が分かる。新しい年後を迎える準備に入った現在から思えば長い年月のようではあるが、一瞬だったとも思える時間がたくさん詰まっている。大らかな歌に深い味わいがある。

 

ー解説・池田はるみーより

 

 

判型:四六判変型並製ビニールカバー装

頁数:140頁

定価:1800円(税別)

ISBN 978-4-86629-093-5

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

玉城寛子歌集『島からの祈り』

 

 

『島からの祈り』より5首

 

洞深く埋もれし息の切れ切れに私はこ・こ・よ南風も眇眇

 

芙蓉咲くに「土人」の声に散らされて滾つ怒りも泥にまみれる

 

墜落のニュースを聞きて今日もまた狂わんほどに空ばかり見る

 

六月の摩文仁の崖を這いのぼる波涛は二十四万の非戦の叫び

 

九条を抜け殻にして笛を吹く宰相の行く手にハーメルンの道

 

 

 

 

 

ここには多くの社会的事象が詠われています。

とりわけ沖縄に関する作品が多く詠まれています。

かえり見れば、私たちの追い求める姿とはあまりにかけ離れた沖縄の現実が、

私の心を揺さ振り衝き動かしたのだと思います。

多くの島人の心が安らぐ日まで、また私の生が続く限り、

このことは詠い続けていかなければならないと今日も空を見上げています。

                                -あとがき よりー

 

 

 

判型:四六判上製カバー装

頁数:196頁

定価:2500円(税別)

ISBN 978-4-86629-095-9

 

 

山本雪子歌集『楤の木』

人生には幸せな時間が流れている。

見るもの、聞くもの、そのすべてが輝く光を帯びているはずだ。

掬い取るように、丹念に、日常の出来事を詠みながら、

しなやかに刻まれてきた年輪は、くっきりと確かな歌の姿を見せてくれる。

 

四六判上製カバー装 2500円・税別

鈴木香代子歌集『あやめ星雲』

肉体をもたぬいのちは涼しからんあやめ星雲もはるけき人も

 

 

いのちに触れる。

今ここにあるいのち、

森羅万象を流れ行くいのちを歌う。

他界のまなざしをもって、

日常の生の起伏を見つめる時、

あたらしい鼓動が歌に宿り始める。

 

病廊をゆくいもうとは角曲がりふいに消えたりわれはおののく

祈るほかなけれど指は組まざりき此岸に一本の綱手繰るため

木もれ日の道はしばらく続きおり次の悲へゆく序奏のように

 

自閉症アスペとアガペ似ておりぬ独りの愛は独りにかえる

ゆるらかに水抱くコップ一生かけわれら不可逆の水運ぶなり

 


澤村孝夫歌集『山峡』

昔から山の中野代名詞と言われた僻地の自然を友とし、

過酷な洗礼を受けつつ楢山に落葉を攫い、稲や麦や蕎麦を作り、秋の田に十段もの高い稲架を組み、牛を飼い、杉や桧の枝打ちをし、猪と共存する生活の中から生まれた厳しくも美しい歌集。

 

蜩のひとつ啼きしが忽ちにひろがりゆきて峡明けんとす

弧を描き鳶は舞いいん声のみに足りて山深く桧枝打つ

山始めの神事を見んと従ききたる幼一様に顔を正せり
十段の稲架いつまでを結い得るや太き組み木を解きつつ思う

朝々をきりり締めゆく亡き妻の縫い置きくれし細き山帯

 

A5版上製カバー装 2600円・税別

 


篠田和香子歌集『雪の記憶』

その中に苦悶を溜めてゐるごとき鈍き音させ今し雪落つ

なまはげの面を付けたる瞬間に若者ふつと大きくなりぬ

目を伏せる花嫁の切手に消印は触るるごとくに押されてゐたり

江戸切子の青きグラスにさをさをと注げば酒の自づから冷ゆ

しなやかな腰に継ぎ足す竿竹の大きく撓ひて夜が明るし

 

秋田県大曲に生まれ育った篠田和香子さんに雪の歌が多いのは当然であろう。本書のタイトルも「雪の記憶」である。

雪の夜に生まれしゆゑの記憶ならむ遥かに聴こゆ雪の降る音

歌われているように雪の夜に生まれ、そのことを自分の原体験として大切にしている。

伊藤一彦・跋より

 

四六版上製カバー装 2600円・税別


鈴木直子歌集『流れる雲』

どっこいしょと立ち上がる私よいしょと腰かける夫老いづく二人

 

晴れの日も雨の日も風の日も、いつも傍にいて共に歌を作り、病む日はその全てを支え合う。安らかならざる老いを肯い、〈どっこいしょ〉〈よいしょ〉と声を揃える、この究極の愛の姿は、『流れる雲』に溢れる愛と祈りそのものである。

佐藤孝子・序より

 

 

かなしきほどに小さき衣の干されけり一つの命()れしこの家

姑のしがらみより抜けねばと紅うすく引きて(あした)の庭を清むる

古稀過ぎて着けたる義肢は重くして幼のごとき歩みになりぬ

桃の花ふくらみくれば恋しさのつのる故郷はここよりも北

風花とうやさしき名を持つ老人の憩えるそのにわれも安らう

 

A5版上製カバー装 2600円・税別


鈴木和雄歌集『婆娑羅一代』

京の雅でも陸奥(みちのく)の素朴でも無い坂東の鄙びた歌を詠む心定まる

グループホームの往診で義歯を預かり直してまた届ける朝と昼の間に

生老病死の四文字に振り回される人生もとどのつまりは骨壺ひとつ

送り盆を済ませてホッとする夕べ 八月十五日は人生の原点

一番幸せだったのは戦争のなかった幼年時代と老々介護の今

何よりもこの一巻には作者の雄々しい人生哲学という心棒が貫かれています。どの一首にもユーモアと俳諧味に支えられた未来志向の生活術とクールな自己批判のまなざしがいきいきと光り輝いています。

黒田杏子・序より

A5版上製カバー装 2700円・税別


菅原恵子歌集『生』

つくばいのめぐりに笹の風()れて空蝉の眼にも映るささのかぜ

大根を抜きたる穴に雪積もりやがて真白き雪原生まる

針山に待ち針錆びぬ母逝きて時の流れの速さかなしむ

雉のこえ鋭く鳴ける山里に仮りの世を生く少し先まで

はつあきの水と水との触れ合いのかかる幽かな思いを忘る

 

みちのくに棲み、鳥や花や空や雪と交感する日々。

そして・一一の大震災。

激しいこころの揺らぎ、葛藤、失意。だが・・・・・・

畢竟、歌を詠み続けるとは自らの生の証!

 

現代女性歌人叢書⑭  2500円・税別   

重田美代子歌集『みこもかる』

「信濃の国は十州に」蓄音機の回転速めきひとり遊びに

浅間嶺の煙ひだりにたなびけば祖母言ひましき「(いくさ)始まる」

イスラムの地に踏み出せば(まな)(さき)に自動小銃向けられてをり

貧困とは無関心なりとマザー・テレサ 住所持たざる若者がゆく

ビルの間を浮遊するごと「ゆりかもめ」底は海とも(くが)とも知れず

 

鯉さばく腕を受け継ぐ祖父の言ふ肝はつぶしてならぬが鉄則

 

紛れもなく著者の歌の原点は故郷である。

〝ふるさと恋ひ〟の心情はどの歌にも微かな揺曳をみせ、作者自身である作品を形成している。

温井松代・序より

  

四六版上製カバー装 2500円・税別

鈴木香代子歌集『青衣の山神』

おうおうと月に物言う子を背負い銀の霜ふるバス停にたつ

ざりガニのもにょもにょ鋏ふりあげて新三年生なり四月の教室

ほとばしる水の野性を汲みあげて樹はしずかなり豊かに笑う

われを打つ子の()に一点悲のひかり慄然としてその悲を瞠る

海神(わたつみ)にむけて信遠古道あり昏きみどりをくぐりてゆかな

生まれきし者のさみしさ聞こえきて聴き始めたり通奏低音

青衣また雪衣まとえる山神(やまつみ)に花かかげつつ人は舞うなり

 

 

 「がるるる」と鳴く蛙、「ふさふさ」と牧場に眠る子馬、「がつがつと」とやってくる寒気、「きーんきーん」と冬星を研ぐ信濃の鬼……。私たち現代人が感得できなくなってしまった気配、聞こえない音、見えない動き等々を、オノマトペの向こうにすらりと浮かびあがらせる。青衣の山神の土地・伊那谷に生きて、我が子をうたい、山神の四季をうたい、教え子たちを豊かにうたう一冊。

 

                      佐佐木幸綱

 

 

佐藤恵子歌集『山麓の家』

氷雨降りいよよ冷え込む列島の四国最中のここに暮らすも

あかままの花の咲く道 遠き日のをさなきわたしが蹲る道

かうかうと今宵満月 母となる阿修羅の叫び 生まれむとする

名月に惚れてしまひしこほろぎか髭を担ぎてひと夜なきける

けぶり立つ山ふところに夢のごとさくら咲かせて山あひの村

 

平凡な日常を輝かせる歌がある。いのちの喜びを素直に祝福する歌がある。透徹した観察眼と、やわらかな批評力を裡にこもらせて。

 

あるがままの生を、四国の山懐に響かせる温かな歌のしらべ!

 

四六版上製カバー装 2500円・税別

澤田美智子歌集『姑ひまわり』

ストーブの上に丸餅膨らみてあっちもこっちもいざこざ多し

半月のほの赤き翳みゆる空私の暗き部分見えくる

秋陽受け涅槃ぼとけの肩の上手足のばして猫も寝ている

姑を容れて夫と私三人の歯車今日もゆっくり廻る

閘門の重き鉄扉は水を制し木曽と長良の舟を渡しぬ


人生経験豊かな百一歳のお姑さんを著者は「はは」と呼び世話をして人生の在りようを日常的に教わっている。姑の最も好きな花はひまわりだという。著者も又姑を太陽とするひまわりでもあろう。

日比野義弘 帯文より


四六版上製カバー装 2500円・税別

菅野初枝 本保きよ歌集『立葵の咲く日々』

洩れ出でて地上を照らす灯し火の一つだになき夜空の深さ

告ぐる日もなくて消えゆくおもひかと白くのこれる月に淋しむ

霜よけにかけしむしろも陽反りゆく今年はじめて咲く花の上

菅野初枝

 

〈ラ・セーヌ〉の濃きコーヒーよ わが裡に風荒れしまま秋深みゆく

板切れに父は〈七人無事〉と書き立ち退き先も焼け炭で書く

うから四人奪う戦と知らざりき十二月八日 今朝の空澄む

本保きよ

 

姉妹の二人歌集である。長い長い歳月と歴史を温めて世に出ることになったことをまず喜び、お祝いしたい。

中沢玉恵

 

四六版上製カバー装 2500円•税込

鈴木みさ子歌集『花韮の白』

この世の外の世界あるらし満月の冴えわたる辺に我は住みたし

混凝土(コンクリート)の塀の隙より伸び来たりわが庭に割く花韮の白

月光の隙なく及ぶ冬木立過去世の誰ぞ近付き来るは

無造作にスーパーのカートに入れられてカサブランカの激しく揺るる

雲一つ無き朝空に黒く立つ林より蝉の声漏れはじむ


遠き物、遥かな視界へ関心の深い作者。満月を仰ぎながら亡き主人を思い浮かべた。西行なら枯れすすきの近くで月を愛でたに相違ないが、作者は場を選ばない。 

晋樹隆彦•跋より

四六版上製カバー装 2500円•税別

椎名みずほ歌集『斎宮の風』



うつし世に斎宮の地に菜花ゆれ風に抱かれてわれはただよふ

秋楡に末葉(うれは)擦れあふ風の日はすこし癖ある足音憶ふ

たまゆらを浄土のひかり波に散り大阪湾をうつくしくする

根雨(ねう)といふさみしい駅を通過する神話の国にさしかかる頃

千切れゆく風景に似て悲しみも削がれてゆきぬ旅の途中は

 

斎宮は伊勢神宮に奉仕した未婚の内親王。一人身となった椎名さん

の心は、現代の斎宮となった椎名さんの心は、現代の斎宮となった

ように、風に抱かれて、まっすぐに前を向き、歩きはじめているの

だろう。道浦母都子 

 

四六版上製カバー装 2600円•税別

佐々木寛子歌集『無糖の白』

来る日も来る日も遠い空からふってくる雪は真夏の夢にふりつぐ

初市に買いたる新車しろがねのトッポめんこいわたしの馬こ

山になり獅子になり弓になるヨガのポーズを終えて人間に戻る

胸の丈越えてふりつむこの雪を仏陀もイエスも踏みしことなし

フロマージュケーキのようになめらかな無糖の白が広がる雪野

いつかとは翅もつことば淡青の空は無数のいつかを仕舞う

 

雪が真夏の夢にふりつぐという下の句には驚いた。雪は一年中ふっているのだ。横手の人の心には。少なくとも佐々木さんの心には。雪は白。白鳥も白。雪の大変さを言いながら、白を愛しているのだ。

伊藤一彦•跋文より

 

四六版並製カバー装 2300円•税別

佐々木邦雄『遠花火』

はしご酒臨界越えてワープせし

      宇宙の果ての止まり木にとまる

 

初期の作品と思われるが、宇宙的な孤独感をも纏っている。そのスケールの大きさには、驚嘆するばかりである。自在で詩精神の横溢した世界である。  光栄堯夫•跋文より

 

シーシュポスの呪縛断ち切りうら若きミューズの神と短歌に遊ぶ

閉ざされし「赤の広場」に雨しぶきわが青春のレーニンは杳く

ぬばたまの夢の続きか遠花火あがりてはまた音もなく消ゆ

わが裡に潜める鬼の持ちゐたるナルキッソスとふ冷たき刃

モウダメダともマダコレカラとも思ひつつ季(とき)にたゆたふ欅の古木

 

四六判上製カバー装 2400円•税別

 

 

末本恵庸歌集『老翳』

夕陽背に「立入禁止」の柵に立つわが影はすでに柵を越えて

カーテンの波打つさまは音もなく寄せくる老いの翳りにも似て

いつの世もやがて一人となる二人寄り添い散りゆく花を見ており

日に幾度「あなた」と呼ばれ飽きもせぬ何杯も飲む煎茶のように

梅の木の枝低くして鼻先に香りほのかに春を呼びくる  

 

末本短歌は難しい言葉は一つも使われずに、読者に負担をかけず、誰が読んでもよく分かる歌ばかりである。しかし、一見単純なようで、深い味わいがあり、生の、そして老いの哀歓が翳りを伴って、深々と胸に沁み入ってくるのであるー光栄堯夫•跋より

四六版上製カバー装 2300円•税別

 

昭和9年生れ歌人叢書4『まほろばいづこ 戦中•戦後の狭間を生きて』

こうした仲間をもてることは、私たちのこれからの生をより豊かに、温かくしてくれると思う。

戦後、奇跡のようにつづいた戦争のなかった時代にも、最近は変化が兆しはじめている。

そうした時点において、本会の意義は一層重要さを増している。各自の戦中•戦後の体験記であり、戦争の無い世界への熱い祈念である本書が、会員のみならずひろく一般にも読まれ、後の世代の平和に貢献できるよう、心から願っている。結城文•序より

 

軍歌からラブソングへ         朝井恭子  

少年のころ              綾部剛   

灯火管制               綾部光芳

鶏の声                板橋登美

ニイタカヤマノボレ          江頭洋子

戦の後に               大芝貫

語り部                河村郁子

昭和二十年八月十五日         國府田婦志子

戦中•戦後の国民学校生         島田暉

空                  椙山良作

確かなるもの             竹内和世

村人                 中村キネ

太平洋戦争ー戦中•戦後         花田恒久

氷頭                 林宏匡

記憶たぐりて             東野典子

少年の日の断想            日野正美

宝の命                平山良明

空に海に               藤井治

戦中戦後               三浦てるよ

椎葉村にて国民学校初等科の過程を卒う 水落博

夏白昼夢               山野吾郎

生きた時代              結城文

ひまの実               四元仰

 
並製冊子版 2000円•税別

上遠野悌子 鈴木りえ歌集『相模野』

ゆけどゆけど会えぬ悲しみ露草の藍も小草も澄みゆく挽歌

ー過ぎゆき

 

ウィット、ユーモア、寓話性、ファンタジー。作者の比喩表現はいずれもモダンなエスプリに溢れている。作者はまことロマンのひとである。

 

 

ボルネオより復員なしし兵隊さん父と知らされ泣きし日の雨

ー歌の歩み

時代、社会、歴史のうねりと、私的家族生活とが重なる地点で歌われている。本書はいわば、そうした家族の戦中戦後史としての性格を持つ。

 

 

谷岡亜紀•解説より

四六判上製カバー装 1800円•税別

島内美代歌集『風の十字路』

■日本歌人クラブ北関東ブロック優良歌集

 

わが家の風の十字路わが居場所避暑地気分に机を据

天空より八一のひらがな舞ふやうに春の雪ふる暮れなづむ里

金平糖ガラスの皿に転がしてひとりの夜の星座をつくる

 

出会いと別れの繰り返し、喜びの風、かなしみの風、無常の風。

それらがこもごもに交差し吹きすぎてゆく風の十字路。

そんな居場所を見つけた作者は、もう歌わずにはおれなくなる。

風のように透明で軽やかに、そして孤独に。

 

四六判上製カバー装 2625円•税込

笹井水輪歌集『ふうせんかずら』

恩寵の七つひかりも十字架も負わず七十路ふうせんかずら

高原のここな小径の舗装され今年梅鉢草を見かけず

鼻寄せて猫がペン先嗅ぐからに吾も嗅ぎしがくぐわしからず

 

どの歌にもかならず見所がある。ともかく機敏俊敏、

才気煥発のきびきびとしたリズム感と、現実を見る

ほろ苦い視線とがないまざって、対象との距離が余

裕を生み出し、そこに軽い笑いが生まれ出るのである。

ーー阿木津英 跋より

 

46判上製カバー装 2730円•税込

 

 

佐藤晶歌集『冬の秒針』

風すこし潤うころに思いおり安徳天皇女性説のこと

亡骸が緑の玉になるという漢詩読みおり吉野ゆうぐれ

木琴の音の澄みゆく秋がきてわれのさびしさコンと鳴らせり

ホームレス「ヨハネ」という名を与えられ葬られたり街の教会

自分ではないだれかのためにある世界コンビニスイーツ犬と分けあう

ハイデッガーの〈存在〉語るきみのシャツは栄螺の内蔵みたいなしましま


 

中世の物語や伝承から喚起された豊かな世界と、

今という時代に対する鋭い批評性。

それらが実は、ひりひりするような危機的な自意識で繋がっている。

 

 

四六判上製カバー装 2625円•税込

 

三枝昂之著『百舌と文鎮』

短歌史における近代から現代の伝統を踏まえ、歌をめぐる日々折々、机上の旅人にあたたかい思いを馳せた体験的エッセイ集。

 

[主な内容]

啄木学会、その他

窪田空穂の思い出

凌寒荘と信綱

「昭和短歌の精神史」について

斎藤茂吉と藤沢周平

前衛短歌再検討

竹山広氏の死

河野裕子さんの死

私の三月十一日

 

 

四六版並製カバー装 定価2500円•税込

佐藤貴美子歌集『藤の宴』

現世に縁の糸でむすばれて綾なる彩で織りたし家族

紫野しぶきをあげて走り去る藤の穂波よ何処にゆくか

君と並み紫けむる夜半の庭一千条の藤と語りぬ

七十五歳の終りも近し赤き靴履きて歩めば女童のごとし

 

藤の花房が風に揺れ靡くように

帰らぬ時間と帰らぬ大切な人。

あるいはまた、これからの未来を受け継ごうとする

若い家族やガールスカウトの少女らや友人知人達。

佐藤さんが歌に詠み込んだものは佐藤さんに愛される。

短歌にはそんな役割もあって、それはとっても重要なのだとあらてめて思い知らされる。

 川野里子 帯文

 

四六判上製カバー装 2625円•税込

 

 

佐佐木幸綱歌集『ムーンウォーク』(再版)

=第63回読売文学賞受賞受賞!=


花束を受け取る人と渡す人いま交差する人生ふたつ

キャンパスに子ども 字が溶け言葉溶けて立つ看板の前に笑えり

しゃべりつつ言葉を選ぶ立ち止まりムーンウォークをする感じにて

 

おおらかに虚空を舞う現代短歌の翼。

切っ先の鋭い言葉の剣。

奔放にして自在なイメージ。

はらわたにしみる「人生」という旨酒。

 

四六版上製カバー装 2600円•税込

 

 

三枝浩樹著『八木重吉 たましひのスケッチ』

=ながらみ書房出版賞最終候補作=

 

偶然、キリスト教会の庭先の掲示板に収められていた一編の詩に目が向いた。

その短い詩に呼び止められた。単純にして原初的で心に深くしみてくる詩。

八木重吉という希有なる詩魂と真摯に向き合い、主観的なはからいを越えたさざ波の音に耳を澄ませ、その清澄な世界を探求し続けた迫真の論考。

 

目次

  〈わたし〉の変容

  二人称の自然

  祈りの生まれる場所

  かなしみの受容力

  自我という執着

  パンテオスの詩

  ノスタルジアのゆくえ

  最後のカルタシス

  聴覚のめざめるとき

  没描写の功罪

  四行詩とは何か

  かなしみ•この透過してゆくもの

 

 

四六判並製カバー装幀 2000円•税込

 

佐佐木幸綱歌集『ムーンウォーク』

=第63回読売文学賞受賞!!=

 

花束を受け取る人と渡す人いま交差する人生ふたつ

キャンパスに子ども 字が溶け言葉溶けて立つ看板の前に笑えり

しゃべりつつ言葉を選ぶ立ち止まりムーンウォークをする感じにて

 

おおらかに虚空を舞う現代短歌の翼。

切っ先の鋭い言葉の剣。

奔放にして自在なイメージ。

はらわたにしみる「人生」という旨酒。

 

四六版上製カバー装 2600円•税込

 

佐佐木信綱全歌集(再版)

完売につき再版致しました。

 

新派歌人時代から充実期、熱海時代に至る佐佐木信綱全作品を収録!!

 

収録歌集

『思草』『遊清吟藻』『新月』『銀の鞭』『常盤木』『豊旗雲』『鶯』『椎の木』『瀬の音』『黎明』『山と水と』『秋の声』『老松』

A5版上製カバー装 五〇〇〇円•税込

 

 

齊藤左知子歌集『帰雲』

いもうとを忘れてしまつた兄の空むかしの青いあさがほのあを

標高差四百メートル上下して風に冷えたる竜胆を見き

散る花と明日はひらかむふくらみと白骨のいろのつづく梅林

昼ふかく肉厚となる日のひかり世長人はうとうととせり

 

猫好きで有名な著者である。

猫以外でも小さな虫から獣たちまで、たくさんの動物たちが登場する。

見どころは、動物たちを素材にした何気ない叙景歌のような歌でも、

読者にふと人生を思わせるような歌が多い点である。——-佐佐木幸綱•序より

 

四六版上製カバー装 2625円•税込

島晃子歌集『月光丘』

悲しみが新たになりて暗みゆく海の白波夜叉のごと立つ

飲みさしの夫の焼酎「百年の孤独」胃に沁む夜半の厨に

射して来る春陽に光る蒐集品いづれもはかな割れ易きもの

君は数十億年の愛を語り吾は白馬の王子失う

 

「六条御息所」は言うまでもなく『源氏物語』の一節である。

『源氏物語』の優れた文学性が読む者を引き込み、

歌わせる力となっていると思うが、背景に長年の研究があるから作品が強い。  鶴岡美代子•跋より

 

 

A5版上製カバー装 2730円•税込

鈴木紀子歌集『万の指』

花冷えを素早く知れり瓶に残るバージン•オイルの白きくもりよ

きはまりて一気に散りたり羽二重の衣脱ぐごとし白き牡丹は

寂しさに堪へかねふたつ合はさりし形なるらむ黄は降り止まず

万の指天に昇れりひろしまの夏の電車に揺られていたり

 

作者の世界の多様さ、あるいは表現の技巧の多彩さに、

先ず目を惹かれるに違いない。いわば知の峰と情けの峰、

心と志の海のふたつを、あるときはまさぐりながら、また

あるときは眉を挙げて言葉にする。そこに、この歌集の

大きな魅力のひとつがある。 光田和伸 跋文より

 

A5版上製カバー装 2625円•税込

関秀子歌集『落葉樹林』

冬の土素手にて掘れば思わざる程の羞しきぬくもりのあり

すれ違う前登志夫の車危うしと見送りしわれぞ急坂の道

 

落葉の山々。さびしくはない。空虚でもない。

その光景は豊穣にして豪奢な作者のこころの原風景なのだから。

雪•月•はなという三章立てで成る一巻。

ぐんぐんと美の異界へと分け入っていく意欲的な作家世界!

 

46版上製カバー装 2,625円•税込

 

斎藤美江子歌集『銀の笛』

ひそ夜ひそかに銀の笛吹く少女子にさざめきを止む星も夜風も

はつ夏の緑まぶしきその奥にひと筋魚の涙を見たり

時経ればかなしみはとほく去りゆきて時は優しく人を起たしむ

 

出会いはよろこびとともにかなしみも孕む。

そう、世界をさまよう純なるたましいの悲傷の声。

先師 島田修二の詩ごころを歌い継いでゆく作者のまなざしはかぎりなく透明にしてもの憂い。

 

 

A5版上製 2730円税込