大和田孝子歌集『空の釣り人』

人みなの去りしのちの釣人は夕映えの空に糸を垂れをり

鳶舞へば腕を広げわれも舞ふ山の上(へ)の雲夕焼けるまで

佐久の空にどつかと坐る浅間領よ火を噴かず我が一世過ぎゆく

にんげんの終の姿のかなしければ屋上にでて寒の星仰ぐ

 

編集者として評論集『山河慟哭』を世に送り出し、歌弟子として歌誌『ヤママユ』とともに歩んできた三十数年。

先師•前登志夫の言葉ー「歌を生きる」。

それは、夕映えの空に向かって釣糸を垂らすことかも知れない。

四六版上製•2625円税込