降り出した雨を見上げる。
薄暗い空の向こうには、きっと美しい虹。
老いた父を通して一世界まで看取った純なる嬰児の眼差しをもって、おおいなる先師•香川進の詩歌のまことをここに歌い継ぐ!
たまたまのめぐりあはせもえにしにて地中海わが漕ぎわたる海
草いきれ海鳴り稲田を渡る風かなたにありてわれを呼ばへる
樹のもとに斧置き去られ こともなく春の日はゆく午後の二時すぎ
かるがると抱きあげられたるちちのみの父に青葉のほととぎす啼く
もう父はひかりを食べているのだろう仰向けるまま口を動かし
四六版上製カバー装 2730円•税込