金丸玉貴歌集『夜叉神峠』

独りたつ夜叉神峠は深閑と雲海のかなたに浮く富士の嶺

とめどなくふぶき散りいる桜花ひとひらひとひら億の孤独よ

幻聴か今も鳴りいるかざぐるまわれの脳裏に風の父あり

いとまなきこの世の憂さを笑うがに真昼の月が中天にある

 

日常に於けるさまざまな哀歓や自然を詠っても

執拗なまでに自己を凝視しており、作品はそこはかとなく

寂しげな影を湛えながらも読者に迫ってくる。

林田恒浩•跋文より

 

四六版上製カバー装 2625円•税込