芦田敏子歌集『鈴綱』

さるすべり梢咲き撓む紅や原爆忌すぎ終戦日過ぐ

もみじして雑草も終りをかがやけば瞠るべきこといまだ多かり

朝々をシテを気魄に紐結ぶ白きエプロンぱしりと干しぬ

父母と逅ひ父母と別れしこれの世にふととき満ちて桜咲くなり

 

「鈴綱」とは、日本の神々の社の前にある鈴のついた綱のことである。

著者の住む大和には国の歴史を彩る神社がたくさんある。

これも大和の歌人としてのひとつの寄辺であり、また矜持と言えるかもしれない。 前川佐重郎•序より

 

四六版上製 2730円•税込