遠景として在るもののやさしさを見せながら夜に明かりがともる
六本のかひなのうちに一本にこの手を添へて阿修羅と歩む
桜桃をひとつぶふくみ種ひとつ吐き出すさい飛ばすあそびす
何ものの命かわれに添ふとさへ思へてならぬ日暮れの風に
沈丁花のかをりいまだし親と子は似てほしくなきところが似ている
生きるとは、命とはという問いを自らに投げかけて、渾身の力をこめて詠う。
評論集『額という聖域』で齋藤史の作品と対峙したことかが糧となって、さらに深淵な世界を見せている。 外塚喬
四六版上製 2625円•税込