橋本忠歌集『白き嶺』

■平成25年度日本歌人クラブ北陸ブロック優良歌集

 

城山の雪きらめけば空を截る鳥も光のつぶてとならむ

冬の田は鋤き返されてさびさびと夕べを繊き雨降りつづく

門のごとに家族の数だけ雪だるま飾るとぞいふこの峡の村

人の世の小事過ぎゆく日々なれや梅はなうづぎの花時も過ぐ

むら消えの雪野の果てに白山のやまなみ光る春のことぶれ

 

加賀平野の阿弥陀島町は戸数十二の小さな集落。

ここが著者の生まれ育ったふるさとだ。

このふるさとの学校で、少年少女の育成に力を尽くした著者。

十年前からは野の人、書斎の人だ。

白山は著者のふるさとの山田。里山の奥につづく白山。優しい姿のこの山は晩秋から初夏まで雪をかずく。

かつては「越白嶺」とよばれ、篤い信仰をあつめた霊山だ。

このふるさとで著者は七十歳を迎えた。古希ならぬ己輝。白き嶺のかがやくふるさとで、歌の人なる己を輝かす。(橋本喜典)

 

A5版上製カバー装 2835円•税込