宇佐美矢寿子歌集『黒揚羽の森へ』

■平成24年度 茨城文学賞(短歌部門)授賞!

 

黒揚羽、青筋揚羽の翅黒き蝶を舞わせて過ぎる八月

月光を胸の隙間にみたしつつ深海魚のごとく今宵眠らん

火の硝子に息吹きこめし風鈴の鳴るはかすかな風の呼吸か

ああ空も傷を負いしか裂傷のごとき三日月きりりと照る

星空に近きひとつの窓灯る祭りの後のような寂しさ

かなかなの澄みいし日暮れ父よちちいかなる声に返しくるるか

 

感覚の特異性

 

宇佐見の作品の魅力はいくつものコスモスの広がりにより、叙情を裏打ちした内容が深くなってることであろう。

鈴木淳三 跋より

四六判上製カバー装 2625円•税込