ひるがへりひるがへりつつ空を斬るつばめの射程にわが家はありて
われといふみなもといづく大和三山をはるかに見つつ明日香風聴く
夜の闇を風にのりくるほととぎすチチハハ欠ケタカ雨夜ハ寒イゾ
夢いくつこぼして人は生きゆくや春のみぞれを掌に受けにつつ
「國」といふ文字木簡のいでし田に千年むかしの泥の匂ふも
鳩のような丸い目は、いつも好奇心にかがやいている。嫁した明日香を基点に、外へと向ってゆくこの人のエネルギーは、どこから発しているのだろう。牧師であった父は、娘たちに「きん•ぎん•さんご」と名をつけた。「ぎん」は吟子。“佳き歌うたえ”今日も父の願いに導かれるかのように、吟子さんは詠いつづけている。
———久我田鶴子
四六判上製カバー装 2625円•税込