橋田昌晴歌集『聴診器』

四十年使い込みたる聴診器胸の内聴く吾が耳となる

震えつつ歌一字ずつ生まれくるパーキンソン病の君の指先

老いを診るひと日の暮れて仰ぎ見る幾万光年の秋の夜の星

白桃に触るるごとくに診療す新入生は四十五名

 

「聴診器」は、橋田氏にとっては「聴心器」でもある。

医師と患者、その家族との間には、遠慮のない会話が交わされているように思われる。

本書全体に漂う、そこはかとない優しさ、明るさは基調である。

野地安伯•序より