■第10回筑紫歌壇賞受賞!
「わたくしを診た医者はみな死にました」宣らす翁を畏みて診る
聴診器はづせば聞こゆクックーと軒下の樫に飛び来たるらし
待機するAEDと語りたり「今日も出番がなくて良かつたね」
診療のはじめに交はす「こんにちは」そに病む人の塩梅を知る
医師にして優れた歌人は多い。本書の長嶺元久氏も内科医として医業に励みつつ熱心に作歌を続けてきた。長嶺氏の歌集『カルテ棚』の大きな特色は、来院した患者の歌の数の多いことと思う。そして、それらの作品が、患者に対する愛情に満ちていることはもちろん、温かいユーモアを醸していることに、読者は快い読後感を味わうであろう。作者のヒューマンな人柄のたまものに違いない。伊藤一彦
A5判上製カバー装 2730円•税込