笹井水輪歌集『ふうせんかずら』

恩寵の七つひかりも十字架も負わず七十路ふうせんかずら

高原のここな小径の舗装され今年梅鉢草を見かけず

鼻寄せて猫がペン先嗅ぐからに吾も嗅ぎしがくぐわしからず

 

どの歌にもかならず見所がある。ともかく機敏俊敏、

才気煥発のきびきびとしたリズム感と、現実を見る

ほろ苦い視線とがないまざって、対象との距離が余

裕を生み出し、そこに軽い笑いが生まれ出るのである。

ーー阿木津英 跋より

 

46判上製カバー装 2730円•税込