榎本光子歌集『ふれ太鼓の街』

ふれ太鼓が遠くひびけり軽やかに心の憂さを捨てよと聞こゆ

われと子の絆となりし連絡帳古りて黄ばむを手にとりて見つ

釣を好む夫がつね行きし上総の海に散骨をと言ひ君涙ぐむ

 

ふれ太鼓がひびき川風が通う両国の地。

税務会計事務所を開き、半世紀近い歳月を作者はこの地で迎えた。女性の自立を願い、それを成しとげた著者の第一歌集。

激変する日本の社会経済の中で苦闘する人々に、税理士として寄りそって北作者のまなざしは、あくまでも優しく温かい。

虚飾を排し、生活の真実とは何かを問いかける作品集である。

雁部貞夫 帯文より

 

A5判上製カバー装 2730円•税込