町田勝男歌集『寂さびと一人旅』

しろがねのつらなるはるか向かうには女(め)の神の棲む雪の蔵王が

鋭角の冬の木立にしづみゆく大き日の輪のあかね 色をかへゆく

梓川はあをさもあをし雪解水の瀬おとすがしく時にうづまく自在

まなかひの秩父の山の蒼ければ、雪ふるきざし吹く風も凍む

湧きあがりながるる雲はたまたまに人のかたちとなりてくづるる

 

真実寂しく抱きつつ

なにを求めんと杣たどる

真実むなしきものならば

みちのくの山にきて

寂さびとものおもう

 

四六判上製カバー装 2730円•税込