三田純子歌集『桃色の麒麟』

桃色の麒麟とう名のつつじ咲く近くに寄りてしみじみと見る

本郷は母の育ちし町なれば行きかう人の肩あたたかし

再びの逢いはつかの間ひとり乗る「ひかり」6号車がら空きのまま

母居れば開けたであろうロゼワイン開けることなく年越えゆけり

抽斗しにいまも残りし父からの旅の葉書の海の碧さよ

 

人がいずこへともなく行き交う。

風景が黙ったままで目の前を通り過ぎていく。

そんな日常の中に「一瞬の生を輝かせよう」

と説いた先師•山田震太郎の教え。

「聖体」として結晶していく歌の数々!

 

四六判上製カバー装 2380円•税込