このやうに一生(ひとよ)は畢(をは)りてゆくものか暮れ急ぐそら葡萄むらさき
もういいかい何度聞いてもこたへなく鬼となりたるままに日暮れぬ
はつ夏のさへぎるものなき須磨の海あをいちめんにすつぴんの海
風花は冬の蛍か触れむとし触れ得ぬままに消えてゆく日々
さびしさのきはみは秋の晴天の昏昏と日はふりそそぐなり
混沌とした身のまわり、心のまわりの風景。次々に来る病いとつきあいながら、限られた風景から珠玉のたましいを掬い取るように歌い継ぐ。加齢とはうらはら、変若水(おちみず)のように蘇生する豊かな感性としらべ。
四六判上製カバー装 2600円•税込