みほとけに遠き己が浴槽に両手を合はす木になりたくて
目瞑れば夢の辻たつ梅林の蕾の間に青き海あり
「わが骨は海に流せ」と口ぐせの父よさびしき白梅香る
肉叢を削ぎ落とすまでの怒りもて春の汀に脚洗ひゐる
肉塊のくづるるごときさびしさぞ赤き人参おろしつつゐて
蒼穹に紛れゆかむか青き芥子物憂きまでのこの明るさよ
先師•橋本武子とのめぐり会い。基地の街•岩国での長い暮らし。さまざまな偶然の重なりが人生であるとすれば、歌とは流れゆく河、その清冽な水を自らの乾いたこころに満たすおおいなる壺。
四六判上製カバー装 2500円•税別