青空はひたすら青きゆゑかなし母は言ひたり死の前の日に
父の無き子に生まれたる我が父はわれら姉妹の父で在りたり
をさな児の目線に添ひて屈み込む児もかがみこみ水仙を見る
うつむかず空を見上げよ冬すみれ母の愛せしむらさきの花
今日咲かう今日こそ咲かう冬薔薇は陽のぬくもりを全身に受く
お粥食み歩きて笑ひ時に泣く小さき命よ 健やかであれ
堀越照代さんは「この五年の間に、母が旅立ち、後を追うように父が逝き」とあとがきにに書いている。この歌集は両親の魂に対する供養の一冊に思える。よき両親に育てられたことの感謝が他の人びとへの愛情になっていることを読者は本書を読みながら感じるであろう。 伊藤一彦
四六判上製カバー装 2500円•税抜