菊川啓子歌集『青色青光』

童吹く草笛遥かヒマラヤの風にのりつつ大和へ届け

やまなみの高き所に鉄塔はもつともやさしく夕焼けてゐる

垂直のロープ掴めるわが手より冬の群青滴りやまず

遠景の焼却炉よりたちのぼる煙の色の今日はももいろ

あしびきの山の奥処に翁曳く桜の枝は芽ぶきはじむる

最後まで何もないのに何かある キャベツの快感皮剥かれつつ

 

青い色からは青い光。青のこころからは青の歌。青は師•前登志夫の風景の色。はるかシルクロード。天山山脈をおろがみ、遠く大和へ届けられる風。そこは仏教の聖地。生死もろともに悠久の時間とともに在る地。

 

四六判上製カバー装 2500円•税別