おお何と鮮やかな老鶯のソロあんずの茂みがかすかに動いた
千鳥舞ふ春用ショールすべらせて金婚式の被写体となる
蜜蜂の翅の重さに揺さぶられぶんぶん眠たき菜の花の午後
メダカ模様の夏帯締めてゆく会議水切瓦の白き図書館
輪になつて座る教室よその子も孫もわたしを渡辺さんと呼ぶ
土まみれの軍手のうへにほこほことねむる子猫は胡瓜のにほひ
築地正子に「いまが詠みざかり」と評された作者である。自由自在である。多彩である。盛り沢山である。そして何より自然体である。そんな作者の自画像が「老鶯のソロ」なのだろう。本歌集中の歌に対する自負なのだろうと読んだ。佐佐木幸綱
A5判上製カバー装 2500円•税別