春日いづみ歌集『八月の耳』

洗面器に水の輪生れて娘とわれの同心円にありにし時間
生れ月四月の雨は桜雨音なく降りて喉を濡らす
本日のわが寛容は何グラム銀の秤のしづかに揺れて
核汚染進む地球にみどりの葉こころのかたちの桂を植ゑむ
窓際にカットグラスを並べ置き天のひかりを育まむとす
 
いつしか歌が祈りのかたちとなっていく不思議さ、自在さ。
やわらかで、時には硬質の抒情をもって、何者かに刃向うように、
あるいはいたわるように迸り出る歌の大スクリーン。
鮮やかに一世界を抉り取る作歌世界!


四六判上製カバー装 2600円•税込