朝影を踏みて出でゆき夕影を踏みてぞ帰るこの身響(な)らずは
幼年の還らざれども噴泉はみづからのみづ浴びて飽かずも
わたつみの葡萄酒色に流るるをホメロス盲目のゆゐといふ説
あられもなき歎きもせむかはかなはかなおなじ身丈のこすもす抱きて
今われを済はむひかりいづべにぞ言葉は星の数ほどあれど
亡き人を見むうつし世の空としも澄むにはたづみ冬の夕べを
歌の根源には、詩という大きな宇宙があり、それを支える「空」があり、「海」があり、「砂丘」がある。この世の大極的なところを常に見ていたのである。
安森敏隆•跋文より
四六判上製カバー装 2500円•税込