うつし世に斎宮の地に菜花ゆれ風に抱かれてわれはただよふ
秋楡に末葉(うれは)擦れあふ風の日はすこし癖ある足音憶ふ
たまゆらを浄土のひかり波に散り大阪湾をうつくしくする
根雨(ねう)といふさみしい駅を通過する神話の国にさしかかる頃
千切れゆく風景に似て悲しみも削がれてゆきぬ旅の途中は
斎宮は伊勢神宮に奉仕した未婚の内親王。一人身となった椎名さん
の心は、現代の斎宮となった椎名さんの心は、現代の斎宮となった
ように、風に抱かれて、まっすぐに前を向き、歩きはじめているの
だろう。道浦母都子
四六版上製カバー装 2600円•税別