雨の日は耳から朝がやってきてびしょぬれバイクのせつなさを告ぐ
トンボにはトンボの航路 秋日和 ひと待つわれは雑踏の底
抜きんでて高くひとすじ豆粒の機影の尻が白雲をひく
山よりも海に惹かれる二人なり樹よりも水の不確かにして
老いし人のふぐりのような干し柿や かくなるものを見せず舅(ちち)逝く
身めぐりのさまざまな物象をそっと掬い取り、定型の器へと盛る。ほのかな艶をはらみ、ユニークにしてどこか謎めいた世界の空。その空は明るく、そして限りなくさびしい。
この世からはぐれていくものへ、
慈愛に満ちた歌のしらべ
四六版上製カバー装丁 2400円•税別