花美月歌集『かはうその賦』

ありつたけの服を並べて初デートに華やぐ吾子に獺祭はある

大穴牟遅ノ神宿らせて振り上ぐるクラブヘッドに光集まる

かみかぜの伊勢と丹波を重に詰めおほつごもりの主婦を終へたり

星の字のつく病院ゆ夫戻る宇宙飛行士(アストロノート)のやうな顔して

清らかな初メール来る「うくひすなきましたそちらはとうですかはは」

はつなつのバンジージャンプ鷹の羽の家紋の血筋をもつてわが飛ぶ

 

「平凡」の中から「何を」歌うか、「どう」歌うか、についての彼女のたゆまぬ努力が非凡の作品を生み出している。

花見月という「かはうそ」が並べた味のある獲物あれこれを、読者が手にとって楽しんでくれることを、これまでの愛読者のひとりとして心から願う。

(伊藤一彦・跋より)

 

四六版上製カバー装 2500円・税別