修正液乾ききるまで待てなくてデコボコだらけのわれの人生
そを聞きに行く啄木と旅をする「次は終点。高知、高知です。」
二十二で二十七人子を持った気におそわれる二〇〇〇年春
「赤ちゃんに卵巣嚢腫が見られます。」告知とともに知った性別
マンマとはご飯なのかママなのか確かなものはわれを呼ぶこえ
アウトドア教えてくれし夫からの贈り物かも今夜の月は
高知育ちの吉本万登賀さんを若い時から知っている。何ごとにも積極的で、第一歌集『青春スクランブル』も学生時代に出版した。はきはきとして快活で行動力にあふれた土佐の女性を「はちきん」というが、見事な現代の「はちきん」だ。本人は「デコボコだらけの人生」と自分のことを歌っている。そりゃ人生ひたぶるに生きるだけ「デコボコ」は生まれる。その「デコボコ」を乗りこえる彼女の『ひだまり』の明るさは読む者の心を温かくしてくれる。
伊藤一彦
四六版上製カバー装 2700円・税別