大塚健歌集『経脈』

へばりつく藻のごときものふり払ひ得ざればかこの沼に棲み古る
過去の人未来の人もまじりて嬉しくなればこをかけたり
眼が開かないと思つてるうちに死んだと声すさうか死んだか
永遠にちぢまらなぬ微差微差ゆゑにむだに希望をいだかしめつつ
しあはせはなるのでなくて感ずるに過ぎぬと暖炉かこむ幾たり

ものを見る。相手を見る。自分を見る。
人生の深まりとともに内側が透けて見えてくる。
見えすぎるがゆえに苦しく、さびしい。そして何より楽しい。
人間心理の微妙さ、複雑さを温かく定型の器に盛る。
その絶妙な色と形。
さて、これからは何を盛り込もうか?

四六版上製カバー装 2400円・税別