いただきをひとり占めして胸はだけ峠の山風身に沁みにけり
日苔のる栽松院のいしぶみにまかり撫づれば碑面ぬくとし
妻とあゆむ林のみちに金蘭をいくつかぞへる朝のよろこび
一服の狭山新茶のすがしさに鮪跳ねてゐいる大間の湯呑み
氏の歌を読むと、いにしえを想う歌があるが、何かもう、「うぶすなの土地」という感じがしてくる。
名もない里山や川を愛し、折をみては散策している。
別に目的があるわけではなく、思うがまま歩き、自然のなかに躰をゆだねている。やはり氏は、自然と遊ばなければ本質は出ない。
福田龍生・解説より
四六版上製カバー装 2500円・税別