すっきりと剪定したる山桃の無骨な枝ぶり惚れ惚れと見つ
たどりゆく空に続かん雪の道父の真白き骨片拾う
入院の間近き夫が汲み置きし山の清水の喉にやさしも
四角豆の花はむらさき花豆は赤く咲きたりそれぞれの夏
露はじく朝採りレタス両の手にすとんと重き浅緑を受く
群れて咲くラッパスイセン入学式を迎える児童のように明るし
人間と自然への関心が深く温厚な田中さんには、家族の歌と農に纏わる歌が多い。真摯に生き、歌うべきテーマを持ち、悲しいことに出会ってからもおおらかさを保って底力を発揮する。
中川佐和子・跋より
四六版上製カバー装 2500円・税別