遠花火を部屋の灯消して眺めゐる肩に凭れてしばらく泣きぬ
いづこかに天への梯子を匿しおく納屋のあるらむ 星ひとつ飛ぶ
千五百の秋の過ぎた気がする大窓を磨き椅子よりわが身下ろせば
触れたしと差しだす指に黒揚羽ふはり止まりて詩稿のごとし
天空にかきつばた咲く水苑のあらむ二藍色のゆふぞら
この世には素直に受け入れがたいものがある。
たとえばよき伴侶との永久の別れ。
天空に風が舞い、夜は星々がまたたく、無辺の闇の彼方へ。
万感をこめて歌を詠み継ぐ、それは愛おしいものへの極上の供物!
現代女性歌人叢書③ 2500円・税別