黒豆をふっくらと煮て持ちゆかん天城を越せば父母ちちははの家
屋根にのりて助けを求むる校友も沈みてゆけり ああ濁流に
「えっちゃん」とだれもが呼んでくれる町 山百合の咲く盆に帰ろう
潮鳴りは春の鼓動かいつしらに心に満ちてくるものがある
弟のぶんまで生きると決めし日もおぼろとなりて冬牡丹咲く
冨岡さんの詠風は、あたかも弾むように明るい。純粋でひたむきな作品は、ふるさとである伊豆の煌めく光の中で、今後ともますますその輝きを増して行くことと私は確信している。
林田恒浩・跋より
四六版上製カバー装 2500円・税別