子を三人生みて育てし歳月はたとへば木綿のやうなる時間
要介護5の<5>は鍵のやうな文字 春のとびらをこじ開けてくる
向きあひて菜豆のすぢ母とひく つういつういと日のあるうちに
虹のまた向かうに虹の立つ夕べ過ぎし人らの影を照らせり
崇福寺 正覚寺下 思案橋 サ行の音の響きあふ町
家族をテーマにした一冊と言っていい。三人の子を育てた時間を「木綿のやうなる時間」と歌っている。木綿といえば、肌ざわりがよく、じょうぶ。通気性がよく涼しい、また厚手にすれば温かい。三輪さんはきっと「木綿のやうな」母親だったのだろう。
伊藤一彦・跋より