「クロスロードみつぎ」起点の遊歩道あるけ歩けと私も歩く
みずからの住んでいる土地への深い愛情はよい作品を生み出す。土地の神も応援してくれるからに違いない。広島県の尾道市に住む鳥山順子さんは並々ならぬ愛情を街と自然に対して抱いている。それは本書のどのページを開いても明らかだ。「クロスロードみつぎ」とは町のバス停らしいが、一見ふしぎで何と魅力的な名前だろう。私たちを「クロス」する世界に誘ってくれる楽しい一冊である。 伊藤一彦
愛といふ複雑 庭の冬薔薇のくれなゐの口ほそく開くのみ
並びゐて手をつなぐなき内裏雛こころ濃くなりゆく日におもふ
わが持てるものと気づかず寄りゆけりカーブミラーのなかのひとつ灯
雨霽れし畦道低く咲き初めてなづなよなづな真つ新の白
水雪の融けながら降り現世と彼の世の境に文旦供ふ
四六版上製カバー装 2500円・税別