20日 12月 2016 西村慶子歌集『むさしあぶみ』 しろじろと遠き桜のつらなりを眺めをりしにはやもみどりに おのれひとりの時もつ夫かしづかなる目を向けてゐる盆踊りの輪 うすべにの小花が茎を巻きのぼるもぢづりかなし芝にはなやぐ あてもなきあゆみたのしみ里山にあくがれてゐる童女さながら 時をかけ聴かうと耳に手を添へて悲しきかたちのわれとなりゐつ 過ぎ去っていった歳月のなかで、陰翳をもってよみがえる、夫の顔、友の声、そして草花。目を閉じて、深く静かにこころをめぐらせれば、かれらは歌のすがたとなって現れてくる。 tagPlaceholderカテゴリ: 新刊歌集歌書, 日記, に, 2016