大陸の虹をくぐりて飛行機は母国の空へ去りゆくらしも
葉の色に同化せし虫ちらほらと朝光に見るキャベツの畑
豪州へエアメール給ひし師の文は歌に始まり歌に終はりき
三日月がふくらみ月になるといふ孫と豆腐を買ひに行く道
ここまでの水位も何ぞ生き生きと里芋の葉の緑がそよぐ
睡蓮の巻き葉くるくるあやつるは鮒か泥鰌か傘置きて見る
日本から遠く離れた大陸での日常を詠むことから始まり、日本に戻ってからも長くその国を想いつづけていることに深い味わいがあるといっていい。
晋樹隆彦・跋より
四六版上製カバー装 2500円・税別