大谷ゆかり歌集『ホライズン』

夜なべする君へうどんの満月が傾かぬようゆっくり運ぶ

鉛筆と定規の似合う雨の朝ななめななめに線生まれくる

目の奥にムラサキウニの鳴くような偏頭痛せり今日は満月

父母の言葉もこもこ着せられて蓑虫となる実家の茶の間

つるつるとしたもの多き世の中に桃は貴重な手ざわりをもつ

百を越すCAD起ち上がり自販機の開発室が息づきはじむ

 

ことさらドラマチックに作られているわけではないのだが、それぞれの歌の中にドラマがある。心安らぐ温かなドラマだ。登場人物が歌の中でイキイキと動いている点も、いい。

(藤島秀憲 帯より)

 

四六版上製カバー装 2500円・税別