松平修文歌集『トゥオネラ』

窓外は暮れ、青炎のごと燃ゆる薔薇幾つ風に揺れてくづれて
誰も信じるな、何も信じるな 冬森で茸をさがす老婆のやうに
樹や草の役多き劇 少年も少女も人間の役やりたがる
日暮らし雨は男待つ日の陰雨(ながあめ)で、尿雨(ゆまりあめ)は男見限る日の俄雨(にわかあめ)
夜空の果ての果ての天体(ほし)より来しといふ少女の陰(ほと)は草の香ぞする
歌集『水村』が、雁書館から刊行されたのは一九七九年九月。
『水村』に寄せる冨士田元彦社主の期待は並大抵ではなかった。
一升瓶をしつらえ冨士田さんを待たせながら、
解説を書き上げた夜のことなどが懐かしく思い出される。
・・・・・とまれ、第五歌集『トゥオネラ』四百八十五首掉尾を前に、「窓外は暮れ、」の一首が燃えながら立つ。(福島泰樹・栞より)
四六版上製カバー装 2600円・税別