朝空の光あつめて直立す原爆落下中心地の碑
花をくぐり竹山広に会いに来ぬつくづく死者は声あらぬ人
七十年後のこの生徒らを思いみる献水桶の水よ輝け
観覧車あけゆく空にゴンドラの鋼の滴吊りさげており
お母さんと呼ばれていたら一回り大きな傘を持ったであろう
これまでの三冊の歌集を通して、反戦・反核の思ひ、そして早世した子への鎮魂の思ひは前川多美江さんの短歌の底を流れるものとしてあつた。そのことは今度の歌集においても変わらない。一生をかけて詠み続けるテーマを自らに課すことの大切さをこの歌集は教えてくれる。(馬場昭徳・帯文)
A5版上製カバー装 2600円・税別