公園の桜の大樹五十年けものめく幹につぼみあふれつ
農をせし彼の日の麦を疎み来て弥生の店の麦の穂いとし
梅雨曇り俄の照りに白昼のわが身の影は足元にあり
英国など早く侵略し公然とひと迫ひはらひ国を盗みき
西瓜食み黒き種のみ判別すその様にして詐欺の解れば
国定里子さんの歌は独特だ。
多くは生活周辺の嘱目であるが何を歌っても歯切れがいい。
省略の文学であることを心得ているからであろう。
近現代の秀歌をなぞるような傾向は何処にもない。影響を拒否しながら作歌する強靭な姿勢とともに純朴な美しさがある。
島崎榮一
四六版上製カバー装 2300円・税別