大原葉子歌集『だいだらぼふ』

 

潰れるかも知れぬ銀行しよひこみて見舞ひくるるよこの青年も

風のなき黄落の森の華やぎは日雀とび去りゆきてさらなり

川水にななめに降り込む雪のかげ千の小魚の走れると見き

松ぼくりもつと落とすと石抛る幼よいくつもよき恋を得よ

農道の草に捨てある山椒魚 生とも死とも()とも(せう)とも

 

 

巨人伝説の山とのおごそかな対峙。

そこに歌の発想の始源をしかと定め、

大きくしなやかに拡散してゆくしらべ。

 

思念の深みから探り出す、

 

たしかな現実の手ざわり。