ものを観察するー真摯でやさしい眼差し。
こころの底に堆積する泥のようなものが、
時として勘定をもち、美しく輝き始める。
歌はそれをそっと掬い取る不可解な器だ。
ベ ン ト ス
底生生物は哀しきものよこの世より積み来るものを黙し食いおる
『底生生物』より 5首
薔薇の字をそうびと読むと知りたりし憂い少なき少年の日に
専門語封印しつつ語らえばわが過去なべて扁平となる
うつくしき周期律には逆らえぬ 核分裂は手なづけられぬ
みずうみの岸に白馬は似合いたり北バイカルに洗われていし
春まだき人間の土地に来たるもの見おろし岬に尾白鷲とぶ
判型:A5判上製カバー装
頁数:190頁
定価:2500円(税別)
ISBN 978-4-86629-101-7