な
シタールを聴きしはいつか藍深き空のいずこか響る
ると思いつ
どこからか、たしかに聴こえる、その音色。
はるか北インドの撥弦楽器の、胸に沁み入る澄んだ調べ。
その調べのように、白い記憶のように、やわらかく。
北海道の大地に暮らしが根づき、歌が根つくまでの歳月。
『シタール、響る』より5首
ぼろぼろになりしと現し身を嘆きたる父のことばが淡雪となる
窓を打つ雷雨にめざめ読みつげる韻律論は雫して来ぬ
永久凍土に眠りいし幼きマンモスのCT画像の四肢小さきこと
列島はさびしき弧にて寒気団せせまればいよよ夢に屈まる
蝦夷梟くるりと首を旋らせて春の隠れ処探さんとする
判型:四六判上製カバー装
頁数:174頁
定価:2500円(税別)
ISBN 978-4-86629-110-9